さぁ、第一コーナーを抜け、各車スタートを切っている。

時間は正午過ぎ、スタートから、10秒経過。

最後尾・16番手のセイン選手のノエリア号のみ、コースアウトを喫するが、それもお約束。

数千年前からの再放送を展開した後、引き続き、コースに戻っております。

真紅の新鋭。

祠の予選マッチを吹き飛ばしたインパクトの持ち主。

まだまだ、潜在能力は計り知れない。

見て下さい、すでに15番手のK選手に及んでおります。

下位チームは財政との戦いでありますが、ノエリア号にはそのような色は全く感じられない。

磨かれた真紅、その艶となっている白。

それらが渾然一体となっており、サーキットの尻に火をつけております。

 

それが導火線となり、速度を上げる15番手。

後方からの火の手により、14、13、12番手のJHI選手もアクセルを深くする。

後方集団の追い上げに、11,10、9番手の以下省略、メルケディス選手達もスロットルをさらに深く。

それもまだ、序の口。

されど、各車隊列が確定される前に、追い上げたいところ。

バックフィールドの団子印は突き抜けるチャンス。

前の車両をかき分けて、情勢に一釘刺しておきたいところ。

ここで仕掛けにいくは、10番手選手。

9番メルケディス選手に逆に鎌を引っ掛けようというのか。

ここはS字コーナ。

それぞれのラインが、イン・アウトと交互に変わる。

その最中で、刺すチャンスが訪れるか。

会心の一撃はどちらが、繰り出すか。

バトルのスリルがおびただしい序盤戦。

ミッドフィールドの8番から4番手までも、先の逆バンクにいるだけで、同じような混戦模様。

 

各所で入り乱れる群雄達。

それぞれの戦いに明け暮れたあの頃、教科書の歴史の授業の縮図をここに至っても、見せてくれるか。

それにより、脳裏に焼きつけば、受験生としては暗記が省ける。

我々としては、チケット代金が得するところ。

あとで、居酒屋で武勇伝の花火にも使え、講釈料でも取れれば、御の字。

走る戦国、生きた戦国、是非とも酔っ払わせてくれ。

さぁ、動乱初期、ごった返す下克上、走る裏切り者集団。

ルールはあっても、義理は無し。

ルールを守れば、何をしても許される乱世。

早くも、10番選手が、メルケディス選手ともつれて、グラベルに弾けるも、裁定はくだらず。

 

これが、レース。

下克上のリスク。

安全なオーバーテイクなどあるわけがない。

あるトップドライバーはそう言った。

レーサーならば、勝つために前に出るべきだと。

そこには温情もやさしさもない、あるのは厳しさと冷徹さのみ。

勝つ本能を鉄とオイルの化身にインストールし、その身を託す者たちの定め。

ましてや、時速300キロ以上の領域は危険と背中合わせ。

裁定が下らないのはそのためか。

いずれにせよ、ペナルティも流されてフィードされていくレース。