正面のガラスにも、その色が映る。
正面のガラスには、サーキットの十色が浮かんでいるのだけれど。
アスファルトの黒、芝生の緑、縁石の赤と白、人々の纏う雑多さ。
正面のガラスには、それらが雑然と浮かんでいるのだけれど。
手弱やかな白さが、浮かんでしまう。
雑然と色を混じらせたガラスには、純度の高い白さが浮かんでしまう。
陽が、天頂に昇る今では、それは尚更。
しとやかな天然の照り返しが、ガラスには鮮やかに。
風が余計な不純物を吹き飛ばす今では、余計に。
そこに風は吹かない。
それでも、風は景色を変えていく。
ガラスに篭った不純物もさっと吹き払って、残る淡さをほのめかす。
白い。
太陽が照らし、風が吐いたガラスでは、白い。
白すぎる。
嘆息が漏れる辺り。
そこで萎れる姿が、浮かんでいく。
爆音の中でも、それらの嘆息は漏れて仕方な無い
ダークグリーンに身を包んだ今でも、いや今だからこそ、白さが眩しい。
ビップルームの人々の、正面に映るまばゆさが。
サーキットの白さよりも先に、視界に飛び込んでいく同じ白さが。
塗料では再現できない、天然の白さが。
正面のガラスには、とめどない。
同じく、目を細めてしまう周囲。
正面の白さを、細くなった瞳に行き渡らせてしまう周囲。
高くなった血潮が細くなる瞼を熱く、その熱流が胸の鼓動でかき回さされていく。
さらに、熱くなる視線。
その温度の中で、萎れる姫。
瞳の青さが、さらに深くなる。
細くなった瞳は、青いスペクトルを内包して仕方ない。
内包された色味が、そこで凝縮されている。
ホワイトグリーンが駆け回っても、それは変わらない。
それどころか、ホワイトグリーンが、一周するごとに深みを増していく。
何度見ても、繰り返される光景。
何度見ても、視線を開いて見れない光景。
そんな自分見入る辺りにも、ガラスに浮かんだ自分にも、気づかずに。
萎れていく、体と瞳。
そんな最中、遠くまで駆け抜けていく同じ白さ、ペアの緑。
こぼれていく、淡さ。
現に、瞳から瞼へ重ねられている。
それは、ガラス越しでも。
ガラスの白い瞼は、もう青みを宿らせてしまっているから。
この不純物は、風でも吹き取れない。
太陽でも、染めることができない。
フィーレが、ついこぼれさせてしまう淡さ。
表面上は、薄い色。
されど、ガラスに張り付いて仕方がない色。
ガラス越しでも、こぼれて仕方がない色。
ホワイトグリーンに茶化されて、ようやく、水滴をこぼさないようになったけれど。
止まらない、こみ上げる淡さ。
瞼の中で、それが溶け合い、温度が高まっていく。
瞼の中の温度が上がっていくことでは、周囲の人もフィーレも同じ。
目の前の白さに色を動かすのも、周囲の人もフィーレも同じ。
目の前の白さに、胸まで熱くなってしまうのも周囲の人もフィーレも同じ。
目の前の白さに、熱くなった体温を瞳からこぼしてしまうのは周囲の人もフィーレも同じ。
同じことは、同じ。
緑までを追ってしまう瞳以外は。
揺れて、こぼしそうになる瞳以外は。
同じはずなのに。
そのまま、視線も体も動かせないフィーレ。
正面のガラスに浮かぶ、まばゆさと淡さはそのままに。
瞳が深く、瞼にまで張り付いて止まない。
そんな彼女の視界を、風が常に新鮮にし、その後で太陽光が行き渡る。
不純物質のない彼女の視界が明るみ、なのに、なぜか青が深さを増す。
その深さをこらえきれなくなったまつ毛が、瞼に滲ませる。
滴らないだけで、こぼれていく様は今も昔も同じ。
ホワイトグリーンが遠くへ向かって、高らかに駆け抜ける様も同じ。
今も昔も繰り返されて仕方がない光景。
フィーレが、滲んでしまう光景。