コクピット内においても、それは変わらない。
そのハスカーナの首が、多少前かがみになる。
上体は、それに合わせて、やや前に。
白いレーシングスーツの上半身が、うつむきがちになるか。
それもそのはず、彼の左足に走る緑色のラインが奥に入り込んでいるからだ。
奥に体重を伝えていく足。
そこで踏み込まれる、ブレーキ。
足に伝わる、ブレーキの油圧。
その挙動を見つめる、周囲のスタッフ。
日差しが差し込まない影の中での挙動に見入る。
それは、ハスカーナの視線も同じ。
これから、何千回と踏み込むブレーキの感覚を確かめている。
今後、ストレートとコーナーの間で、繰り返される情景を宿しながら。
その要を踏みしめる。
レース界においても、独特のブレーキング技術を保有しているハスカーナ。
他のドライバーでは真似のできない領域で、ブレーキを繰り返し踏みしめてきた。
全人未踏の領域を、高速の彼方で踏みしめ続けてきました。
そこは、光の当たらない影に包まれた領域。
だが、そこでこそ光るハスカーナの足さばき。
そのハスカーナの白い足に神経が注がれております。
グリーンラインも、その先に流れていきます。
高度化されたソール文明でも、到達できない感覚の先へと。
今年度、ハスカーナの復活に合わせて投入された新マシン。
ハスカーナのために投入された、ホワイトグリーン。
たった一人のライバルを除いて、際立ち続けた白と緑。
その開発過程には、ハスカーナが大きく関わっていると言われております。
重症を追ったどん底においても、今シーズンを見据えて、ボディ、タイヤ、エンジンの開発に関わってきたハスカーナ。
この少年なら、マシンを一人で分解し組み立てることもできると言われている。
そのようなマシンと一体化している少年が繰り返す、入念なチェック。
サーキットに一番最初に入り、最後に帰るということで有名な少年。
タイトなスケジュールが組まれている、ソールフォーミュラことSF。
そのSFドライバーの中でも最高密度で動いていると言われているハスカーナ。
彼の栄光は、恵まれた才能だけでも、優秀なスタッフだけでも、SF界きってのエリートチームの力だけでもなし得なかった。
その勝利は、日々の余念のなさによるもの。
この瞬間においても、それを隙間なく投入し続けるハスカーナ。
日差しの当たらない暗闇の底を、踏みしめながら。
自身の感覚を頼りに、スタッフとやり取りする。
見えない答えの先。
周囲の状況により、変転するそこ。
データとカンを頼りに、そこを調整していく。
正面の液晶には、再調整された数値が浮かんでいく。
持ち前の緑眼に共鳴する緑字。
太陽の当たる面において、緑が深まっていく。
照らされる緑眼にスタッフが視線を寄せる。