「バブーっ」
引き続き、声を上げるソールシップ二号の黒ラブ君。
それを扉のそばで眺める少年。
大きな黒い目にお座りしているそれを映しながら、目尻を引き締める。
傍らの少女の横髪の毛先が、それに呼応して揺れ、少年の方へ振り向く。
茶色い瞳に、黒い瞳が重なる。
大きな黒い色が茶色い瞳を覆い、黒っぽい色に様変わりする。
それをしっとりと、一重の瞼が包み込む。
白が一面に広がる素肌が、アステリアの白さを反射していて眩しい。
薄っすらと綾のない縁に、白い陽炎さえ見えてしまう。
そのような小さなまぼろばのラインからは、ほのかな甘い香りまでがこぼれていく。
アステリアに吹く湿り気を含んだ風が、そのこぼれ出る微かさを少年の鼻孔にまで運んでいく。
それにより、少年のピンとした目尻が若干蕩けそうになるも、こめかみの筋でこらえている。
若干、その筋が隆起しているのは、顎の付け根の筋が多少緊張しているためである。
角ばった顎の中の奥歯で、緩みそうな表情を堪えているのである。
顎の下の喉元からも柔らかい声が出そうだが、それは今黒ラブ君が代りに出している。
喉元の下にくすぐられるような感覚が走るが、そこは喉前の奥歯をがっしりさせて固く縛っている。
キーアの芳しさをセインの体全体にさかんに風が運ぶ勢いがあるが、それも奥歯に連動した胸の下の腹筋と鍛えられた下半身で踏み留まっている。
その裏の背中や膝の裏からは冷や汗が伝うが、風に温度をさらわれ、身も引き締まるどころか、固まっていく。
そんな背後を抱えたまま、その胸の位置において、キーアの薄絹のように滞りのない素肌がある。
細く柔らかな茶赤な前髪の毛先が、その素肌の白いまボロばのなかで滲んでいる。
その霞の境界で薄い眉が、ナチュラルな形を描いて、少年の網膜をまどろませる。
細まりそうな目を留めるのに、少年の目の周囲の筋肉が忙しい。
その眉が少年の長いまつ毛先に当たりそうになるが、今はそれを抑えている。
そんなセインを照らすキーアの瞼は、一点の曇りもなく、相も変わらず眩しい。
柔らかな輝きが、セインの瞳に光を灯す。
その白さに目が眩みそうになるが、それも眼球の縁や頬の筋を走らせ、角ばった顎をさらに角ばらせ、背筋を立て、後ろの踵で大地を押すことにより、据えた黒目を崩すまいとしている。
その淀みのないアーチがまばたきをするたびに、セインの瞳に白さを広げていく。
白い薄絹の腹が、二人の顔の間に巻き起こる砂埃を通り越し、清々しい高みを作り、セインの網膜に幻影さえ見せてしまうが、それも水晶体の筋を縮めることでレンズの厚みを大きくし、一定のピントを維持している。
無論、切れ長は固くなり、頬は張り詰め、顎はさらに直角に近づき、背筋は硬直しているが、それも白い肢体のやわらかさに絶えず解されているので、そこまで緊張しているわけではない。
それ以前に、セインの筋繊維の一本一本や骨格は太く仕上げられているので、融解や緊張においても容易に萎れたり、切れたりはしない。
その場において、維持される瞳の黒さは以前のまま、真っ黒な天然の純度を維持している。
それゆえに、キーアの瞼の白さを投影するには十分なコントラストを持ち、その表面には温度を伴った光がありありと灯っている。
その黒目はアステリアの砂埃の疾風が、どれほど強くても濁ったりはしない。
その目は明快どころか、虹を吐きそうな光の中で、柔らかな白さに富んでいる。
その焦点は曇ることなく、維持されたままである。