そこには、もう一人の青年の姿も。
この局面で滑り込んできた、碧眼の主。
彼は、息を切らせながら、皆に放っていた。
「スイッチを押すためには、異なる五色が必要なのだ」と。
彼の言うとおり、スイッチは確かに五色あった。
「その色を同時に引き合わせることが大事なのだ」という。
シュマイツァーが核をひく五色のプログラムを作ることも考えたが、それでは「アステリア戦争の二の舞」らしい。
「ヴェセラン様やタイケージ様のみを焦げさせたあのときと。
それよりも、より多くの仲間の波長を持ち寄り、白色を作って押し返すことで、あの光さえ塗り替えることができる」と。
「きっと、この五人ならあの光よりを超えられる」と。
「なぜなら、シュマイツァーがここに駆けつける前にそのことの気づいていた五人だから」
皆、シュマイツァーらしい淡い見通しだと思った。
本来、五人いなくても、五つのスイッチを押す方法ぐらいいくつもあったが、誰かの白色の重みが増すことを恐れたのだろう。
まだ、五分ほどの時間があるにもかかわらず、珍しく時計を忘れて、息を切らしてきたシュマイツァー。
その口から次々と吐かれる光の粒が、まぶしい。
こぼれる白い歯が吐いた粒と光を反響しあい輝かしさを増していく。
そこに彼の瞳にある色が移り、碧い宝玉が生まれる。
また、他の粒子に薄汚れた少年の青いつなぎ色、えらをはる笑顔の少年の服の赤いラインの色、透き通るような白い素肌の少女のヘイゼルを明るくしたような黄色、金髪の少女の香る素肌ような桃色と、服、素肌、一族の色のリメイク等、さまざまな境遇をもつ皆の色がこもって、虹よりも多様な色合いを照り栄えさせる。
それの宝玉たちを取り囲むように碧き粒が淡い枠を作り上げ、青い宝玉が勢いよくその枠で跳ねて、他の宝玉たちを躍らせていく。
それを見つめる澄み渡った瞳にある湖底が、五色の色を宿す。
彼の放つ瞳の陽炎に、その5色が映り、滾っている様子が分かる。
彼の堀の深さは、それらを確かに縁取り、とりどりの色たちの色彩を際立たせていく。
その彼の方を寄ってたかり、青い繋ぎ姿の少年が「いっしょにぶっ飛ばそうぜ」と声を上げている。
その声に、「ああ、お前たちとならやれる」と、荘厳に包まれた淡さを濃くする青年。
右手に持った他の設計図を握り締めるコブシに、汗が溢れてその紙が水まみれ。
濡れて、その紙に並べられている文字列が透けて見えている。
あまり青い少年が彼を振り回すものだから、その紙もそこにいる色んな少年少女たちに触れて、様々に破れ、変色してしまっている。
そこに垣間見える”アステリア平原の放射能除去”の文字。
その後には、まだ完結していない途中の文字列。
それもまだ乾き途中のインクの後が、紙のところどころに移っている。
それを見ては、赤いラインを纏う少年が、青年に目を見張る。
その少年の湿気った瞳を見て、頷くシュマイツァー。
その瞳の下には、クマさえ覗ける。
よく見ると、充血の度合いも深い。
顔面も蒼白に近く、皆の色で目のみが塗装されているに等しい。
彼の5色にまみれた湖底の赤が、縦に振られる。
そして、そのシュマイツァーに、肩を貸すセイン。
多少、いつもより体温が低い。
清潔好きな彼にしては、体に垢があり、髪の毛も脂ぎっており、体全体が生くさい。
目も大きく開いているようで、ほんのたまに、目が閉じたりする。
セインが肩で支えてあげると、それがさらに顕著になりコクリとするときがあるが、唇を噛みしめて、皆の前に向き直っている。
傍らのハルキは、そのようなシュマイツァーの様子に気づいているのか、「安心しろ、オレがさっさと眠らせてやる、わざわざ借金しにきたバカをな。」と小声で言いながら、彼の頭を小突く。
セインに支えられているから倒れないものの、これではシュマイツァーも瞳を閉じる間もない。
周囲の少女達もシュマイツァーの状態に気づいているのか、白き少女は梅を、桃色の少女は白き英雄の白黒写真をシュマイツァーに見せて振っている。
白き少女の手により口に放り込まれたキトル・レアにない物体の味に目を丸くしながら、桃色の少女に苦笑する。
碧眼の青年は、手荒い少年の汚い一手への応酬に、鼻をつまむ少年への表情を和らげるのに、屈託のない少女が差し出した異物を飲み込むのに、彼をよく知る少女が差し出した白黒写真を振り払うのに忙しい。
その湖底は、常に五色が忙しない。
そして、五巡はしたところ、「眠気覚まし、お仕舞い」と青い少年が皆に呼びかけ、皆、五色のレバーの前に着く。
その頃には開けた目を閉じることができなくなっていたシュマイツァーは、一際素早く、定められた印に着く。
皆がそばにあるワンレンズの深いサングラスを取り出して身に着ける。
そして、先ほど、ハルキとハウミにより取り付けられた固定具で、体を固める。
相変わらず、素早くセットしたシュマイツァーの湖底には、5色の光が横に並んでいた。
それを収める瞳は今、湿気を最高潮に向かわせていた。
湖底から弾んだ五色の宝玉が、今こそ、再び、天井に舞い上がるのが見える。
高く、蛍光灯で光る部分を、五色で染めていく。。
淡い色が彼らの枠をつくり、赤い色がまず飛び出して、それに黄色がついていき、桃色がそれらを包む。
そして、彼の認めた青が碧き宝玉でバウンドして、彼らのお尻を叩きにいく。
そのまま、横一線に空に上り、ある一つの色を形成していく。
それを作る色は七色でも、光りの三原色でもなかった。
もっと、偏った個性的な色たちだった。
それゆえに、合わさったときの白さは、天にまで昇るほど。
そのまま、彼方にまで、高い光を伸ばしていく。
――――キトル・レアだけでなく、エザーヌからでも見える白色爆発が今、始まろうとしている。
横一線に、勢いよく。