二人の動きに合わせて、その右斜め前方に浮上する複数のスイッチ。
上昇している間、低音の駆動音が胸に響く。
それとともに、銀色の上昇レールについている潤滑油の特有の匂いが、周辺に漂っていく。
それに気づき、視線を向ける二人。
依然、目鼻の滝が止まらない。
彼らの視線の真っ只中に位置しているそれは複数の色に溢れていたが、その下に伸びている無機質な鋼の鏡面は周囲の黒緑の壁の暗さを写していた。
その上昇とともに起こる駆動音も、次第に重くなっていく。
その重さは、網膜にも、鼓膜にも、のしかかるほどだ。
いつしか、上昇が終わり、今度はその停止音が爆裂していく。
その激しい音により反射的に、二人の瞼が一瞬閉じる。
視界の肉裏に、暗闇が映る。
その暗闇の中において続けざまに、次の油圧音が寄りかかっていく。
右から左に鼓膜をつぶしていく衝撃に閉口する二人。
その口先から出てきそうなものを、互いの肌でせき止めている。
音を介した振動が、胸にまで押し寄せる。
それが心臓の血管さえ、振動させる。
波打つ動脈が、眼球へ続く血管の出口からそれていく。
重い音圧が、少年と少女の瞼を青冷めさせていく。
それも、二波のみではなく。
連続的に押しつぶすような衝撃音が走る。
それが室内の壁で反射され、さらに振幅を強めて、二人の鼓膜の左右から脳の芯へと突き抜けていく。
すでに、そのスイッチが出現したときから、猛烈な圧力音が二人を圧倒している。
それに付随して響く、リズムの一定しているも間断ない音。
鼓膜を突き刺すように、連泊を続けていく。
その音は、押しつぶすような重低音のそれとは違い、若干、軽いものの執拗なまでに小刻みに繰り返されていく。
それも彼らの鼓動が弾んだ後に、刺されていく音であり、胸の辺りにまでガンガンと迫っていく。
そのしつこさに、口どころか、耳まで互いの肌で覆い合う二人。
互いの肌伝いに、刺す音に迫られながら、互いの鼓動の音により、血流がひと時は安定していく。
それでも、しつこく突き刺す音は止まないどころか、次第に振幅を強めていくが。
そのリズムに合わせるように、重低音の衝撃音がシンドロームを強めていくが。
二人は、吸い付けた互いの耳を離さない。
むしろ、ますます互いの肌にそれを埋めていく。
そのまま、白い耳に薄肌色の胸が重なり、白い匂いを受け止めていき、薄肌色の耳に白い肌が重なり、薄肌色の肌をやわらかくしている。
やがて、重低音の衝撃音が収まり、何かが弾けるような音が続きだす。
引き続き、刺すような音は振幅を高めているが、それに比べて、その音は振幅を安定させて迸らせている。
それに合わせて、閉じた二人の瞼越しに景色が青白く染めていき、次の瞬間には収束し、また次の瞬間には明るませ、と周期的に点滅が繰り返されていく。
「バチバチ」という効果音を、持続させながら。
その明滅に、二人は互いの瞼を開かせる。
そこに映る、茶色い瞳と黒い瞳。
依然、二人を突き刺すような音は止まないのだけれど、互いの水晶体には、青白い点滅が映っている。
その景色を瞳に収めながら、瞼を開閉させていく二人。
その瞼のタイミングを合わせながら、頷く二人。
斜め前方から突き刺す音は鋭利さを増しているけれど、その光源に向けて、いそいそと視線を寄せていく。
途中、瞼を鋭い音で閉じそうになるも、それを瞬きに変えて、その光の方角に視線を持っていく。
無論、それはスイッチの方角。
若干の青みがかっているものの、紛れもなく、白色に光り輝いている方角。
そのまぶしさに、鋼鉄色にまみれたシルエットが、黒くくすむ。
あまりに鮮明なフラッシュが、焼きついたままだ。
焦げることで、ますます明るくなる光が、そこに存在している。
息を呑む二人。
符を合わせたかのように、のど仏が膨らんではへこむ。
その首の下も炸裂された閃光により、焦げて見える。
輝いて見えるのは、瞳に映るその光源であった。
唸りを上げる音が食い刺さる中、二人はそのまぶしさに近づく。
その目元にまで接近する光の粉。
それが勢いよく飛び込んでは迸る。
幾星霜に、次々と続いていく流星群。
暗黒色を湛えた無機質な鋼さえ、その流れは埋め尽くしてしまう。
二人の視界が、光に包まれる。
青さを残すも、果てしなく白い閃光の中に。