ねぇ、覚えてる?セイン。

あれは、訓練所の合宿のとき。

トレーニングもない休日のことだったかな。

南部にあった合宿所はキトル・レアにしては蒸し暑くて、日当たりが強くて。

まるで、エザーヌに着たかのようだった。

そこでのこと。

 

テキウスたちは「折角の休みだ」って、海水浴に駆け出してた。

あの人は休みじゃなくても一人で海水浴してたけど。

一人で、レーナ・サルバー握って。

それも寂しくなったのか、「休日」っていう口実ができたのか、みんなを誘ってた。

なにせ、南部って、温室。

 

元々そうだったみたいだけど、昔、大きな赤ん坊が流れてからもっと緩くなった。

政争にまみれた他の地域とは、別世界。

そこでは、トンビ君がみんながジャンプできないところに到達してるから、触れない。

サルくんが、なぜか、下水まみれでウロウロしてるから、触りたくない。

ちょうど、そんな風に他の地域が近寄れなかったときに、犬掻きで流れ着いた赤ん坊がいたの。

最初は、トンビ君もサル君も気づかなかった。

今まで、嵐の海の中をつたって、南部に来る人なんていなかったから。

当時でから南部の台風は有名で、南部の海は「台風海だ」とフタをして、他地域の人は泳いできたりはしなかった。

 

その台風が何を思ったのか、北西部にまで突き抜けて行った後だった。

あの浜辺に、赤ん坊君が流れてきたのは。

一人で誰も誘わずに泳いできたから、疲れちゃったみたい。

そこで眠ってた。

ストレートで太い黒髪を滴らせて、堀の深い底は閉じたまま。

グースカ、グースカ。

日当たりのいい浜辺でお寝んね。

少し離れて子供たちが輪になってるけど、赤ん坊君のいびきでかき消されて聞こえない。

聞こえてても、人見知りの赤ん坊くんは、そのままおねんねしてたかも。

ううつ伏せになって、そのままフカフカな浜辺に唇をつけて。

その感触を感じながら。

 

暖かいにぁー。

やわらかいにぁー

ベッド見たいダニぁー

バブー。

気持ちいいにぉだぁー

こにぉままぁ、寝返りぃ打ってぇ、バタンキュー。

ブー。

頭君をぉ、シュリシュリしてぇ、暖かい砂ひっつけてぇ、体にもぉ、引っ付けてぇ、ホッカイロみたいにぃしよぉ。

ブー。

服とかぁ、濡れちゃってるしぃ、塩水冷たいシィ、僕がここで暖ったまるにぉもぉ、この砂君次第だよぉ。

冷めてもぉ、僕のせいじゃにぁいからにぇ。

いっぱいぃ、僕ぉ、暖めるんだよぉ。

僕ぅ、かわいいからぁ、いっぱい包めるんだよぉ。

しょしたらぁ、ぼくぅ、元気になって、また「お腹空いたぁー」とか言うからにぇ。

しょれまでぇ、やさしくぅ、ぼくぉ、抱っこしゅるんだよぉ。

バッブッブー、バッブッブー、バッブッブー。

気持ちいいにぁ。

髪の澄みずみまでぇ、抱っこされてぇ。

頬やぁ、肩にぃ、やわらかい暖かしゃがあってぇ。

にやんかぁ、低い声で繰り返されるぅ、子守唄もぉ、聞こえてぇ。

こんなにぃ、気持ちいにぉ、久しぶりだにぁ。

 

・・・・どれくらいぶりだろう。

あれぇ、思い出せないやぁ。

たしかぁ、こんな風に僕をぉ、寝かしつけてくれるぅ。お姉さんがぁ、いたような気がしゅるけどぉ、気のせいかにぁ。

こんな風に、髪の毛をかわいかわいしてくれてぇ、膝枕してくれてぇ、太い声の湿り気のある歌が聞こえてきてぇ、僕の頬もシュリシュリしてくれてぇ。肩もさすってくれてぇ、挙句の果てにぃ、お腹とかもぉ擦ってくれてぇ、僕ぅ鯨さんみたいにぃ、「ぶー」ってぇ言うにぉ。

しょしたらぁ、横でぇ一重のぉ目をぉ細めてくれるにぉ。

僕もぉ、うれしくなってぇ、笑うにぉ。

しょしたらぁ、僕をぉ抱きしめてぇくれるにぉ、

僕がぁ窒息しゅるくらいぃ、抱きしめられてぇ、茶色い髪やぁ肌からぁとろけるくらいぃ甘い匂いがぁ嗅げてぇ、もうユルユルになっちゃうにぉ。

しょれでぇ、骨抜きになった僕の顔見てぇ、もっとぉ強く抱きしめてぇくれるにぉ。

強いにぉにぃ、やわらかい感触でぇ、僕ぅまたぁ、鯨君みたいに。「ぶー・・・・」って吹いちゃうにぉ。

しょたらぁ、もっとぉもっとぉ抱きしめてくれてぇ、力がぁ抜けちゃうにぉ。

バブー。

確かぁ、しょんにぁ。お姉しゃんいたよにぇ。

にぇ、しょうだよにぇ。

バブー・・・・・。