ここにいるインペリアルパレスの部員はそれらを推し量ってか、この件に対して今の段階で問い詰めるものはいなかった。

それよりも先に、彼らは前線のシップの動向を把握しなければならかったからだろう。

無論、タイケージの職分もそこにある。

再び、手を動かし、指し示した。

ライトが当たる相貌に額、鼻、口の影が染み付く。

次に、口角に張り付く影が動いた。

「・・・・おそらく、シップの推進力では、あのチェーンソーで叩かれたら堪らない。

じゃが、核誘爆の勢いなら別じゃ。

・・・・・あれなら、計算も合うじゃろうて。」

 

言い終えて、タイケージは目を横に向けた。

そこには、スクリーンではなく、外壁があるのみであった。

なぜかライトは当たっていない。

黒いごつごつとした質量のみが感じられる場所であった。

吹かないはずの冬の風が、その壁を見るタイケージの脳裏を掠めたような気がした。

その風が、本当に吹いたのかはわからないが、皆は身をすくめていた。

目を異様に大きくし、あのスクリーンに写るシップを睨んでいる。

中には、明らかな血柱を立てているものもいる。

その血柱が、瞳の影に幾重にも張り巡らせている者も。

 

いずれにせよ、ここで硬直していない者は、吹かせたタイケージのみである。

なぜか左耳が気になったのか、その穴に手を突っ込んで中をいじり繰り回している。

左目のみ閉じ、空いている右目はどこをみているわけでもなく、左の穴の中に注意を寄せている。

よほど苦戦しているのか、うめき声すら上げている。

いつものよくわからない矯正を発しながら、スクリーンはそっちのけである。

今度はそれを見はじめた皆も、キョトンとしてしまっている。

中には一瞥してスクリーンを睨み付ける者もいるが、タイケージの軽いご乱心に耳は傾いているようだ。

不思議な間が流れているが、それもつかの間。

耳くそが取れたようだ。

意外に大きい。

すっきりしたのか、突然、チューチューと笑い出すタイケージ。

その声を聞いて、眉をひそめることもできない、パレスのエリート達。

もはや、教科書にない番外編の最前線は、この翁であったらしい。

突然、手のひらの耳くそを息で吹いては、よりによってパレス部員たちに吹きかける。

たまらなくなって悶絶する部下の表情を見ては、ねずみ笑いを大っぴらに披露する翁。

被害者の表情を見ながらつぶやく。

さりげなく。

皆に。

「今は、無礼講じゃ。

・・・・・見てりゃわかるんじゃからのぅ。」

そう言って「のう」と皆に念を押しては、強張るものに「律儀、律儀」とどっからともなくとってきた棒で叩いて回る。

叩かれた者はさらに目を丸くする。

それを見ては、それ以上に目をおっ広げて笑う翁。

 

・・・・なんというか、この翁の心情はわからない。

こんなもの、確かに歴史資料には載せられない。