その指は、小刻みにタッピングを繰り返し戦場となっているアステリア平原の地下の平面図を取り出した。

そこには無数の赤点があった。

地雷である。

 

だが、そのことで驚くものは皆無であった。

それほど、珍しいものではないのである。

ここ、アステリア平原は500年前の大戦の主戦場である。

であれば、不発地雷がその大地に埋め込まれていてもおかしくはない。

ましてや、最高度のインペリアルパレスのエリートであれば、その存在くらい知らされている。

そうでない一般市民であっても、知っている公然の事実である。

地上政府の方でもこの地雷を撤去したかったが、500年間できなかった。

先の大戦でその資金も、人手も吹き飛んでしまったのである。

しかも、よりによってこの地は死の灰で覆われていた。

超近代文明を有するキトル・レアであっても、放射能除去には資金と人手を擁する。

きっと政府としても、アステリアというキトル・レア最大の穀倉地帯を再生させたかっただろうが、その願いは核爆発とともに吹き飛んだ。

よって、地雷はそのまま放置されている。

 

ここで、あるパレス員が質問した。

「なぜ、シップはそのまま地雷に飛び込もうというのでしょうか。

我々は彼らの生還確率を計算しましたが、いずれもエラーでした。

相手にはシュマイツァーもいます。

そのような自殺行為をあえてするとも思えません。」

困惑と疑問が混じった表情でパレス部員が言い終えると、タイケージは者の表情に目を細めた。

他の者についても眺め渡してみると、同様の表情であった。

その者達の表情をみて、タイケージは再び、降下するシップに視線を向けた。

その目は見る時間がたてばたつほど細まっていくようだった。

シュマイツァーは今でも、彼らから慕われているらしい・・・・。

そう思った。

さすがに、皆の前で体面もあり、嘆息までは漏らさなかったが、タイケージとて、今はここにいない天才に対する畏敬の念は一分子もそがれてはいない。

体面を保つために、敵方となったシュマイツァーをわざと卑下する場面もあったが、彼の才幹はこの場にいるパレス部員達よりも同質を才を多量に持つタイケージの方が知りすぎている。

タイケージは再び、スクリーンから彼らに視線を戻した。

そのタイケージを眺める視線は、どれも湿り気を帯びたものだった。

目頭を熱くしている者もいる。

なぜ、袂を分かつことになったのか、過去の日に、タイケージですら思いをめぐらせてしまう。

心境としては、彼らも同じだろう。

シュマイツァーならば、無謀な作戦はしない。

また、シュマイツァーならば、みすみす死んでほしくもない・・・・と。

なればこそ、彼らはあのように必死にシップの行方を予想していたのだ・・・・。

 

再び、スクリーンに目を移しそうになったが、タイケージは目を細めるにとどめた。

彼は最高度の指揮官である。

そして、今となっては、最高神ヴェセラン以上の最高度の利益代弁者である。

今は、それ以上のそれ以下でもない。

500年前より、そのような憎まれ役は当に慣れきっている。

いまさら、看板を下ろすわけにもいかない。

500年前のあのときより、自分はこういったメッセージを発することを引き受けてきた。

今は、それでいい。

そのことをどう思うかは、お前達次第。

わしは言うべきことを言うだけじゃよ、と。

口を開いた。

なぜか、相貌から歯がこぼれた。

「・・・・ただの地雷じゃあな。

じゃが、あそこには、核の地雷が埋め込んであるのじゃ。」