「いいかぁ、いけるとこまで突っ込め――。
ギリギリまで詰め寄るんだ。
心配するな、この船の肝っ玉はお前らのよりしぶといぜ―――。」
ギョロ目の眼差しを崩しながら、音頭を取る少年。
薄汚れた青いツナギはどこかで作業をし来たのだろうか、それとも買う服がないのか、総指揮官の体には見えない。
傍にいる少女の金髪と白と緑の模様のついた戦闘服のきらびやかさに比べれば、別の意味で抜きんでている。
服の生地も少女が身に着けているキトル・レア製の超近代繊維に比べれば、強度も薄汚れている。
それでいて、立ち位置は少女よりも一段も二段も高い。
一番高い指揮席のテーブルの上で突っ立っているからだ。
それゆえに、目線は少女のそれよりも高い。
副官として少女もなるべく同じ目線でいようとするも、さすがに同じマネはできない。
それでも、同じ景色を眺めようと、スクリーンに目をやる少女。
その金髪が祠からのワインレッドに染まる。
美しい金髪を染めてしまうワインレッドが憎い。
酔いしれることなど、できようもない赤さ。
それと同時に、轟音を立てて、ソール・シップ二号の艦橋に広がる憎い色。
憎しみの血の色が皆の視界を覆いつくす。
その衝撃にたまらず、傍にいる少女が傍の椅子の背もたれに自身の体の重心を傾ける。
その茶色い瞳は、艦橋のスクリーンの赤紫に目を凝らし、ハルキに見やる。
「どうだ、ハウミ、いい顔だろ。
テキウスと違い、特注品だぜ。」
この期に及んで、自身の顔の品質を歌い上げる座頭市をまだ披露できるらしい。
そのあっけらかんとした商売文句に、目を泳がせるハウミ。
心性・穏やかすぎるこの少女には、ハルキの眼差しの理由を察するには多少時間がかかる。
戸惑いながら、そこにある計器類に目を寄せる。
一応、副官として現状確認をしようとも思った。
祠からのソール砲がヒットして、最も反応する計器類。
そう思い、装甲ゲージに目をやった。
―――変動ゼロ。
その瞬間、ハルキに目をやった。
だが、その時、ハルキはもうスクリーンに目をやっていた。
――一段も、二段も高い目線から、か。
自分も含めて、なぜ皆がハルキを総指揮官に任命したのか、改めて頷く。
視界は血のような赤。
そこに染まらない黒いサル目。
頼もしいと思った。