透けるような白い肌が、そこに滲む。
なにもない空間を撫でるかのような手つきが、そこにいる悪ガキたちを和ませる。
モッズ感の漂うダーク・グリーンのベストの下に着こんだ、ダーク・グレーの七分袖から漏れる、白い瞬き。
ボーイッシュな少女の姿からは想像もできない、やわらかい仕草。
かわいかわいされる空気が、綻んでいく。
ふかしジャガイモを食べて解れていった白い腕が、秋に漂う冷たさを溶かしていく。
打ち解けた空気を吸い込む悪ガキたちも、つられてモノをたたき出す。
木の机が、太鼓と化す。
そのリズムが、フィーレの手さばきと同調する。
そのリズムの先を包むかのように、フィーレの左の掌が広がる。
夕方のそこに、白い星が舞う。
開かれた五指の間の毛穴から、白い光が吹き上がる。
それに合わせて、リズムが高鳴る。
誰もが生まれたときから聞いたことのある芯の音が、そのリズムに重なる。
跳ねる音が、跳躍を増していく。
その音に合わせて、低い脈動がとどろきだす。
誰かが丸太に丸太をぶつけて、重低音をどよめかせたのだ。
ドーン・ドーンと。
黒い音の中で、軽やかに舞うフィーレの腕。
深いバス音に後押しされて、開くもう一つの右腕。
白い膜が上がっていく。
それとともに、白い息吹が脇から体のラインから露わになっていく。
ショートにまとめられたストレートの髪の毛が、艶を増す。
その艶が、陽の光なのか、素肌の照り返しなのか、誰も知らない。
ただ、その黒髪が潤みを増す。
真っすぐに伸びた髪の毛先は、滴の上で滲んでいく。
白い光に包まれていく滴が、まばゆい。
彼女のたおやぎに合わせて、きらめいていく。
誰かがとってつけてきた弦の音が、そこで跳ねる。
光の粒の中で、その音が反響していく。
木霊す弦の音の中で、空気を両手でなでていくフィーレ。
掲げられた左手は柔らかく、胸の芯へ降り立ち、空気を掬った右腕はそのまま胸の芯へくみ取っていく。
胸元の膨らみの中で、和えで行く空気の音。
弦・椅子・丸太の兄弟たちが、そのなかで抱擁を乞う。
そんな彼らの頭を、胸の岡の上でかわいかわいしてくれるフィーレ。
その丘は、太陽と素肌の白さのなかでより明るむ。
ダークなベストとシャツの上で、その白い包容が光る。
その白さに呼応するかのように、フィーレの白い歯がこぼれていく。
しっとりと肉付きのいい唇のなかで、滲む白さ。
どんな色めきも、その白い色に光を譲ってしまう。
ゴーンと、どこかの悪ガキが遠くのベルをも鳴らしていく。
108の魔物も、今は見とれるだけ。
教会の番人たちも、この非常事態に頬を緩める。
箱以外で展開される舞姫の姿に、皆が見とれる。
ここはお金がなくても見れる、陸の竜宮城。
土の色に合わせてか、普段は青い姫も今は深い色に身を包んで。
白い腕をまたたかせる。
白いやわらかさが、あたりに広がる。
円を描いて、一日のなりわいで角ばった皆の相貌を丸くしていく。
ヒュー。
ある男の口からこぼれ出る高い声。
サルたちも予想だにしなかったサインが、色香の季節を告げる。
負けまいと、他の男たちも口笛をます。
風の吹く音に、その音が重なる。
自然と男たちの合唱が、フィーレの舞う姿に向けられていく。
その中で、弧を描いて跳ねていくフィーレ。
高まるテンションに合わせて、その舞いも軽やかさを増す。
その間、下たる白い滴が、まぶしい。
広場に、彼女の香りを舞い散らせていく。