同じ一行目クラスの人材としては、他に、テキウスがいる。
シュマイツァーと昼夜と問わず、照り返してきた男である。
生涯の光景と言ってもいい。
この二人は、事実、今の戦いが終わっても、キトル・レアを照らし続ける。
太陽の陽を、海が照り返すように。
太陽の動きを、波として伝えるように。
太陽の熱を、湛えるように。
太陽の姿を、行き渡らせるように。
テキウス。
この希望神の子息を当初、ヴェセランでさえ、扱い兼ねたらしい。
いや、終始と言っていい。
熱すぎる。
恒星である。
そのフレアには、ヴェセランでさえ、照られざる得なかった。
最高度の宮殿の白壁の汚れを、白く塗り変えたのは、テキウスである。
それも、500年製の汚れである。
歴史記念物ゆえに、誰も触れることをためらった、暗黙の了解であった。
だが、太陽には、暗さはない。
黒点さえも、輝きで染め上げる男である。
“汚いものは汚い”と、はっきりと、ヴェセランに宣言し、その前で、塗り替えて見せた。
その颯爽さに、ヴェセランでさえ、言葉を忘れた。
紫は、元々、宮廷を彩る色である。
それゆえに、その上に重ねられた黒いしみと、同化することもない。
黒と相性はいいが、汚れと並べられる輪郭ではない。
塗り替えられなかった理由は、一つ。
それが、アステリア戦争での同胞たちの焦げ付きであったからである。
すべてを塗り替えるはずであったものが、そこだけ残った。
再度命じて、塗り替えされるはずであったが、未練が残った。
焼け焦げた同胞たちに、である。
傍から見れば、宮殿に残された汚れ。
だが、最高度の者たちは、それを言うことを憚った。
皆、ヴェセランの紫が、清濁併せ吞んだ器に注がれていることを、知っていたからである。
人類が、忌まわしき戦争と言いつつ、その焼け跡を、博物館化することと同じ所業である。
そこに、なんの意味があるのか。
そこまで考えないのかもしれない。
いや、考えられないのだ。
散っていった同胞への友愛が、忘れられずに。
テキウス当時、12歳。
シュマイツァーより2歳年下。
セインより、二歳年上。
身動きできないヴェセランらを背にして、ダウン・フィールドに、降り立った。