時系列は遡り

メイン・タワーの戦いが終わり、その晩。

 

 

ハルキ

「キーア、あれ、返すぜ。」

 

 

ハルキは自転車置き場においたそれを指さした。

夜も更け、虫の鳴き声がこだまする。

エザーヌの夏は蒸し暑い。

 

キーアの襟首からのぞかせる色白な素肌がまぶしい。

 

 

キーア

「汚い!」

 

 

そこにはいつものキーアがいた。

 

 

ハルキ

「文句言うな、これでも精一杯、オレ達は闘ってきたんだ。」

 

 

そういえば、セインがいない。

敏いキーアはすぐに異変に気付いた。

 

いや、どこかでハルキ一人が現れた途端、胸騒ぎがした。

 

 

ハルキが後ろ髪を掻いている。

言いづらいことを告げる際のくせだと、幼いころから知っている。

 

 

ハルキ

「キーア、その、、、な・・・・。」

 

 

本当なら、ここにセインも一緒にいるはずだった。

いや、この事実を告げるのは二人の関係を知っているハルキは、セインだと思っていた。

だが、セインは、メイン・タワーから一言も会話せず、いや、できず、力なく自室に吸い込まれていった。

ハルキの方でも、キーアに告げるよう促したかったが、迷った

 

ざっくばらんなキーアが、セインには細やかに気を使っている。

ひょっとしたら、自分の方が、気の置ける仲のため、適任なのではないか。

だが、ここで自分が言えば、セインはどうなる?

 

要するに、ハルキも悩んだ末のことだったのである。

どちらがいいのかは、皆目見当がつかない。

 

だが、キーアは聡い。

 

 

キーア

「お兄さん・・・・、何かあったのね。」

 

 

悲しい顔をするでもなく、そのままの細い一重の瞳を向けた。

 

どちらかというと俯瞰的に、物事を押し並べてみることのできるキーアは、こういうときも冷静に見えた。

 

ハルキを見つめるつぶらな目。

 

少年のようなその瞳に飄々と見られると、ハルキもなんと言いいづらい。