今日で東日本大震災から10年となる。
私が岩手県陸前高田市を訪ねたのは2013年10月だった。
何もかもが地上から消え失せてぽかりとあいた空間が広がっていた。
見えるのは土地の嵩上げ工事のために行き交うダンプの姿だった。
そうした荒涼とした光景の中に遺された1棟の集合住宅の姿に私は息をのんだ。
5階の一列を残して完全に破壊された住宅
津波の凄さ、恐ろしさが何の説明がなくても直接に伝わってきた。
私はこの時の衝撃を忘れることはないだろう。
この前日に盛岡市の岩手県立美術館で柳原義達の彫刻 “岩頭の女(ひと)” を見た。
この作品は陸前高田市の体育文化センターの開設記念として
中庭に1978年に設置されたという。
しかし2011年3月の大津波で流されて行方不明となり、やがて瓦礫の中から発見された。
左手は半分なくなり、両足首は切断され、両足に大きな損傷を受けていたが
脱塩・錆止めの応急作業をして県立美術館に仮に置かれていた。
女性像は毅然とした表情、姿勢で前を向いて立っている。
困難にめげず、前に進もうとする被災地の人たちの強い意志を表すように。
柳原義達は舟越保武や佐藤忠良とともに戦後の具象彫刻を代表する一人
「彫刻は、立つことの美しさをその根源にもたなければならない」 とは柳原の言葉
あの建物もこの彫刻も大震災から10年の今はどうなっているだろうか。
私自身は10年前の今日、会津から鬼怒川経由で帰宅の途中大地震にあった。
栃木県栃木市を走行中の東武鉄道の電車が激しい揺れで動けなり、そのまま不通に
帰宅不能となってその夜は避難所に泊らざるを得なくなった。
栃木市の方々の好意にただただ感謝の一晩だった。