広島県三次市(みよしし)と島根県江津市を結ぶJR三江線が全線廃止になったのは2018年3月だった。日本海にそそぐ江の川に寄り添うように蛇行しながら進むこの路線は旅行者には魅力的だったが、地元の人にとってはあまり効率がよくなかったのだろう。利用者が減り、その上災害による不通が度重なって廃止となったらしい。
廃止の話が新聞で伝えられた2015年秋に最初で最後になるだろう三江線に乗りに行った。新幹線で広島に着き、芸備線に乗換えて三次駅に着いた。
中国山地に囲まれた盆地の町の駅は廃線という淋しい話とは異なり出来たばかりの駅舎と駅前広場だった。「芸備線100周年」 のお祝いと関係があるのかもしれない。
駅にはKIOSKとセブンイレブンが一つの小さな店があった。
9時57分発の車両は途中の石見川本駅行だった。
三次駅を出て少し走ると馬洗川にかかる巴橋が見える。
昔の町は橋の左の方に造られ、この辺りでは夏には鵜飼が行われるという。
巴橋の近くで二つの川と合流した江の川は山の間をくねくねと日本海に向かう。
三江線もトンネルや鉄橋を繰返しながら川と仲良く江津に向かう。
年配の親子と相席になり、カープワインをご馳走になった。
三次のブドウだけで作ったものだそうでファンの熱意を感じた。
この年はサッカーは優勝したが、野球は残念だった。
車窓の眺めは山の紅葉と民家の赤い屋根(黒い瓦もあるが少ない)。
赤い艶のある瓦(石州瓦)は、芸備線・山陰線沿線も含めて特色のある眺めだ。
関東・東北では見かけない眺めだ。
石見川本駅に12時 9分に到着。13時49分まで待たないと江津行は出ない。
乗ってきた車両が走るのだと聞いて、?。運転手の昼休みだろうか?
仕方なく人の姿のない街で店を見つけての昼食だった。
後で調べて分かったのは、ここから終点江津駅までは交換駅がないために
三次駅方面の列車との交換のためだった。
いよいよ江津駅が近くなった。
江の川も大きな川となり、対岸には赤い屋根の集落が見られる。
14時49分、いよいよ江津駅に到着。休憩も入れて約 5時間の旅だった。
ここで山陰本線に乗換えて出雲に向かう予定だ。
江津駅で写した時刻表。なんと一日に 5本しか走っていない。
それでも走らなくなれば沿線では困る人がたくさん出るだろう。
知恵を絞ってなんとか存続できるように願ったが結局2018年4月1日付で廃線となった。 100kmを超す路線が全線廃止になるのははじめてとか。(三江線は108.1km)
15時17分発三次行の車両が静かに駅を離れて右にカーブし山の中に消えて行った。
私の乗ってきた車両だ。
目指す出雲市駅はここから特急に乗って 1時間弱、日本海と赤い屋根の続く眺めだった。
三江線の建設は1930年代から始まり、1975 昭和50年に全線開通した。
廃線まで43年の歴史だった。
三次と江津間は直線距離で60km弱だが、鉄道は108kmある。
沿線の人口減、少子高齢化や道路事情・自動車輸送の変化に鉄道は対抗できなかったの だろう。