ヘーゲルの歴史哲学講義でも、アナトリアやオリエントは「西洋文明の始まり」とされている重要な地域です。
しかし、我々アジア人としても、その最西端にある地域は、浩瀚な文明があり、かつて中国と渡り合った匈奴や突厥種族の「移住先」でもあり、長い年月をかけて、多くの民族が混ざりに混ざった末、ものすごく重層的な文化構造を、現代のトルコは引き継いでいます。
さて、本題へ入ると、ひとえに「国家主権を守る」と言っても、国境警備をやったり、警察権力を用いて、犯罪などを取り締まるといった「表面的な活動」を話すのではなく、自国を遥かに凌駕する超大国と接したとき、それに動じない国造りをすることを指します。
トップたるものの資質
レジェップ・タイイップ・エルドアン<第12代トルコ大統領>(Wikiより)
今回その中で紹介するのは、トルコのエルドアン大統領です。
この人は、すでに60を過ぎていて、本来ならば隠居して、安楽な生活を送るのが「幸せな一般人」としての人生というものですが、エルドアン氏は、トルコ内における数々の難局を切り抜け、己の精神をすり減らし、命がけでトルコの「主権」を守っています。
Michikoさんのリブログ記事をもとに、トルコの概要をざっと説明すると、同国はNATO参加国であり、果てはEU加盟にも意欲的だが、欧米から理不尽な保留を受けています。そして基本的イスラム教国であり、アメリカの自分勝手な戦争により、結果発生した難民危機によって、ある程度受け入れることを条件に、まとまった資金と、トルコ人のEU通行権を得ましたが、それによって金をとられた欧米人は、エルドアン氏を憎んでいます。
そして、諸々の出来事からドイツとの関係が悪化したり、殊に自国内部におけるクルド人の存在は、ものすごく複雑な問題を生み出しています。
またアメリカ政府は、「アンチエルドアン派」の中心人物であるフェトフッラー・ギュレン氏を匿っており、再三トルコ政府の引き渡し要求を無視し続けています。
フェトフッラー・ギュレン(Wikiより)
ここで重要なのは、エルドアン氏が2016年7月に、トルコ国内のクーデターによって、本来は「死んでいた」はずだったのです。
当時日本でもニュースになりましたが、事前にロシア情報機関から、クーデターが起きることをエルドアン大統領は知らされていたので、殺されずに済みました。そして一度はロシア軍機撃墜によって悪化した同国との関係も、その前のエルドアン氏のお詫びと合わせて、この機を境にエルドアン氏とプーチン氏は距離を縮めて、今ではロ土両国は『蜜月』状態です。
こうした国際情勢を見ても、アメリカ政府がトルコ内部で事を起こし、自国に叛逆的なエルドアン氏を亡き者にしようとしていた可能性も浮上しており、クーデターの企画・指揮に関与しているギュレン氏を匿っていること(トルコ政府が名指し)からも、そう考えるのが妥当でしょう。
本来トルコは「アンチアサド」で、米国主導のテロリスト支援作戦にも中心的役割を果たしてきましたが、自国内で頻発するテロや、一連のクーデターを期に、ロシアとの関係でもって、その立場から退いています。
そして奇妙にも、クーデターが起きた後の2016年12月に、トルコに派遣されていたロシア大使のアンドレイ・カルロフ氏が、白昼の美術館で暗殺されるという事件が起こりました。
この後の2017年、ロシア・イラン・トルコは、シリア内戦をいち早く終結させるための共同調停者となり、翌年の8月には、トルコは米国人牧師をスパイ容疑で逮捕しています。そして、アメリカは報復でもって経済制裁を化しました。そして、今まさにトルコ通貨である『リラ』が暴落して、同国は混乱の渦中にあります。
以上のように、終始Michikoさんの記事を後追いする形となりましたが、日本ではこうした情報がまったく入らないので、数少ない英語ブログから情報を拡散することでしか、今私の出来ることはありません。
結論として、一国の主権を守るというのは、自民族の自立を守ること含め、私たちが想像する以上に、ほとんどのことが「トップ」の資質に委ねられます。
同氏のブログでも述べられているように、「相当頑張らないと」それは成就されません。
ましてや、地理的にも微妙な位置にあるトルコは、エルドアン氏のような胆が据わった人でなければ、大統領の職は務まらず、それは洋の東西関わらず、平気で主権を侵してくる超大国と、ガチンコで勝負する国のトップは、皆そのような役割を果たすことを強いられます。
時には命を脅かされ、圧倒的軍事力で恫喝されたり、楽なものではありません。並の人間なら、とうに発狂するか、自国の主権を手放して、素直にアメリカの言うことを聞く「ボンボン」になった方が、よっぽど安楽な暮らしができるし、それが、自分の寿命や権力を延ばす『最も効果的な手段』なのです。
「自国の主権を守る人たち」は、決まって欧米から『独裁者認定』を受け、メディアを通じて終始バッシングされ続けます。しかしながら、冷静に考えて、そもそも「脆弱な国家基盤」で、どうやって自国を防衛出来るのでしょう。
綺麗事だけでは、この世の中を知ることはできません。
我々はそうした事実に目を背けて、ただ与えられた情報だけをもとに、彼らが「独裁者」と認定するところの人や国家を、一方的に悪であると決めつけ、分かった気になり、それ以上の分析をしようとはしない、これはもはや「思考停止」と言わざる得ないでしょう。
<参考資料>
・Cluttered talk blab blab blab 『この国に、この大統領あり、レジェップ・タイイップ・エルドアン』記事
https://ameblo.jp/cluttered-talk/entry-12401932434.html
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