私のブログにもコメントしている、ネトウヨの長渕(岡田力=夜王)が放言しています。

 

そもそもこの問題は、スポニチのWeb版からの要約によると、漫画誌『月刊コロコロコミック』3月号モンゴルの英雄チンギスハンの肖像画に侮辱的な落書きをした漫画が掲載されて問題になったことを受け、同誌3月号の販売中止を発表したことに始まって、大きな国際問題となっています。

 

先月15日から販売されているため、書店に返品を求め、購入者も返品を希望すれば代金(税込み530円)の払い戻しに応じるそうです。問題になった漫画は吉野あすみ氏の『やりすぎ?イタズラくん』。小学館によると、同作は別冊コロコロコミックで連載中。『月刊コロコロ』3月号には「出張読み切り」として掲載されていました。               

 

侮辱的な落書きを描写したことの波紋が広がり、在日モンゴル大使館が2月23日、日本外務省に抗議。小学館が同国のバッチジャルガル臨時代理大使に謝罪しました。モンゴル出身で大相撲の元横綱朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏ツイッターで「先祖バカにするおまえら」「品格がない日本人」などと憤りを表明しました。さらにはモンゴル人団体が東京都千代田区の同社前で抗議デモを行う事態に発展しました。

 

https://twitter.com/Asashoryu/status/966600474219524096

 

先月26日、小学館前で「月刊コロコロコミック」にチンギスハンを侮辱する漫画を載せたとして、抗議する在日モンゴル人ら(Photo By 共同)『スポニチ Sponichi Annex』より

https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/03/07/kiji/20180306s00041000203000c.html

 

小学館広報室は販売中止の理由について「チンギスハンを敬愛する方々にあらためて深くおわびし、書店での混乱を避けるため」としています。『イタズラくん』の別冊コロコロでの連載は今後も継続する考えだという。作者の吉野氏は同社の公式サイトで「モンゴル国の歴史と文化について不見識だったことを深く反省し、今後はさまざまな国の歴史と文化を深く理解し尊重する表現を心がけていきたいと思います」と謝罪しました。

 

「コロコロコミック」の販売中止、チンギスハン落書き問題受け(『スポニチ Sponichi Annex』2018年3月7日記事)

 

https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/03/07/kiji/20180306s00041000203000c.html

 

 

今回の問題において、画像を見ると本当に酷いのが伺えます。これが仮に日本の天皇だった場合、果たして日本人はタブーなしで落書きできるでしょうか。おそらく絶対にできないでしょう。そうした不都合を棚に上げ、相手の国に対して、手前勝手に、これほどまでに敬意や理解の欠けた振舞いを出来るものなのか。この時点で日本人が、根本的な意味において「礼儀正しい」「品格がある」などとする御託が、虚像そのものであると認識できるでしょう。

 

おまけに作者は表現者である以上、それに伴う責任も同時に背負うわけであって、『表現の自由』を闇雲に掲げること自体について、日本の国際社会における立場を危うくするものであることを再認識致しました。

 

ちなみに騎馬民族のモンゴル部族の国家については、自らを『帝国』と呼んだことはなく、「ウルス」(仲間意識の集団)としての国と捉え、『集史』の「部族史」において、「大モンゴル国」(モンゴル語で「イェケ・モンゴル・ウルス」 杉山正明著『モンゴル帝国と長いその後』一〇〇頁・一三〇頁)としました。

 

同じ騎馬民族の女直・満州族の場合だと、「大清国」(満州語で「ダイチングルン」 同著二〇頁)とします。

 

また『モンゴル皇帝』という表現についても、チンギス・カン自体は「大可汗(ダイカガン・ダイカアン)」として即位したのであり、皇帝とするのはいささか中華的すぎます。他の可汗国の例にしても、高句麗や突厥などもそうです。苛立だしいことに、名称についても作者の無知や不理解が目立ちます。ほんとにノリだけで描いたのでしょうね。

 

このことで私が一番危惧するのは、イタズラ書きひとつに始まり、日本のモンゴル人ヘイトを緩やかに醸成させ、ゆくゆくは「作者の意図」すら飛び越えて、こうやってモンゴルへの負のイメージを創作して、煽り立てることは、まさに近代ヨーロッパが行ったことの『焼き回し』です。

 

ここから本格的に関係書物の参考にしていきます。

 

19~20世紀に「普遍化」したヨーロッパは、欧米本位の世界像・知識体系においては、モンゴル帝国とその時代を真正面から実寸で扱うことはありえませんでした。むしろ19世紀に列強化したヨーロッパ諸国においては、遊牧民とアジア諸地域をともどもに「劣等視」する彼らの先入観にふさわしい典型として、「モンゴル帝国」をやり玉に挙げました。

 

興亡の世界史09 杉山正明著『モンゴル帝国と長いその後』講談社

 

同著の要約引用によると、かつてヨーロッパを恐怖に陥れたとされた、モンゴルこそは、遅れた征服さるべきアジアの代名詞として、歴史と時代を超える格好の標的となりました。

 

近代欧米において、異常なまでの昂揚した「文明主義」と自己愛、それによる偏見と傲慢の産物です。かの名高いアブラハム・コンスタンティン・ムラジャ・ドーソンの『モンゴル人の歴史』(日本語訳では『モンゴル帝国史』)が、1820年代~30年代のヨーロッパにおいて大歓迎されました。

 

事実とは別に、モンゴルを殊更貶める論調が、今やヘーゲルの『世界精神』の名の元に、アジアへの本格侵略に乗り出さんとするヨーロッパ列強たちの「時宜」やその時代の雰囲気・気分にかなっていたからでした。モンゴル帝国を筆頭とする過去の歴史への負のイメージ化は、欧米による価値づけを前提とする歴史家たちに引き継がれました。

 

無論、西洋人歴史家に限らず、アジア人歴史家においても顕著であり、その残影は今もなお、かなりあり続けているのが現実です。

 

とりわけ、ユーラシアの内側、北をロシア連邦、東南西の三面を中華人民共和国という、巨大な二つのパワーによって完全に囲まれ尽くしている現代のモンゴル国では、「大モンゴル建国800周年」として国中を挙げて慶祝し、高さ300メートルの巨大なチンギス・カン象が経ち、紙幣に肖像が刷られ、国際空港もその名に代わり、いたることろ、さまざまなものにチンギス・カンが溢れました。

 

日頃はむしろ、チンギス・カンを心の中で敬愛し、大切な聖なるものとして静かに愛おしんでいる人が多いと、引用書物の杉山正明教授はおっしゃられています。

 

かつて、ソ連が健在だったころ、当時のモンゴル人民共和国でチンギス生誕800年をかなり盛大に祝おうとする動きがありましたが、ソ連の力で弾圧され、政治家・関係者はつらい目にあい、文字通り叩き潰された事実があります。チンギスを残虐な侵略者とするのは、ロシア帝国以来の定番であり、ツァーリ権力を聖なる救世主とし、自己の支配を正当化するための手立てとして機能しました。そしてソ連もまた、その後継者に他ならず、愚者の愚行を演じてためらいませんでした。1962年で出来事です。

 

このような事実を中で、モンゴルの人々が苦難の歴史の中で、チンギス・カンを如何に捉えていたのかということも理解せず、下品かつ幼稚究まりない、およそ表現とは言い難い「学生レベル」の落書きで、表現者を気取り、あまつさえ商売をしようとしたのですから、方々から掣肘を加えられても致し方ないことだと、私自身は強く思います。

 

 

‐私のリブログに対するネトウヨたちの頓馬なコメント‐

 

 

 

 

『長渕の怒り』「モンゴル人に告ぐ」より

https://ameblo.jp/karisumahst/entry-12358710874.html

 

この中でMogaは、はだしのゲンの中沢啓治先生を例に、日本の昭和天皇をボロクソに言っているから良いと書いていますが、両者は全く似て非なるもの。一方は過去の戦争における生々しい原体験をもとに、日本人自身の手による過去の贖罪や事実をもとに描かれたものであり、かの手塚治虫先生も、当時の歴史を記録する『民話』であると評されていた記憶があります。

 

反面、この吉野あすみ氏の本については、歴史的知識が皆無の上で、学生レベルの落書きで、過去の歴史上の人物を下品に貶める内容からして、両者の「表現のレベル」は雲泥の差です。一方で、これも「表現の質の違い」であると述べる人もいるでしょうが、国際問題に発展している以上、そうした言い訳は通用しないと思います。

 

 

<参考資料>

 

・「コロコロコミック」の販売中止、チンギスハン落書き問題受け(『スポニチ Sponichi Annex』2018年3月7日記事)

https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/03/07/kiji/20180306s00041000203000c.html

 

元横綱朝青龍関のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏のツイッターより

https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/03/07/kiji/20180306s00041000203000c.html

 

・興亡の世界史09 杉山正明著『モンゴル帝国と長いその後』講談社