前回の記事『‐李承晩ライン・漁業問題(独島‐竹島問題の考察)その2‐』

https://ameblo.jp/epikutetosu/entry-12358253007.html

 

先の李ラインにおけるアメリカの「発言」を期に、以下のような議題が話されました。

 

①専管水域についての原則問題

 

②専管水域の基線についての技術問題

 

③漁族資源保護のための共同規制問題

 

④日韓漁業共同委員会設置問題

 

➄韓国漁業への日本の経済協力問題

 

※当時は排他的経済水域という概念がなく、漠然に「専管水域」という表現だけにとどまり、後1982年に『国連海洋法条約』の発効において、新たに「専管水域=排他的経済水域(EEZ)」という概念が新設されました。沿岸国はそれに代えて,漁業資源に対象を限定した漁業専管水域を設定できる。その範囲は,経済水域と同じく沿岸より200カイリとされています。

 

出典 株式会社平凡社/世界大百科事典 第2版について

https://kotobank.jp/word/%E6%BC%81%E6%A5%AD%E5%B0%82%E7%AE%A1%E6%B0%B4%E5%9F%9F-53190

 

そうした事実を踏まえ、主に専管水域についての原則問題は、韓国側は沖合40カイリまでを、日本側は12カイリまでをそれぞれの主張として展開していました。

 

当時の専管水域について、国際的にも様々な主張があり、一定していませんが、大体の趨勢は1960年ジュネーブ国際海洋法会議にて、沿岸の低潮線(干潮時の海岸線)に沿って沖合12カイリの巾(はば/ひらき)を原則とすることが、ほぼ定説となっていました。

 

専管水域の基線についての技術問題とは、先の原則が沖合何カイリになろうと、それに基づいて沖合までを測定する基礎になる線(起算線)です。

 

また現在における状況は、先の漁業専管水域(漁業水域)と重複しますが、1982年に採択された国連海洋法条約排他的経済水域の制度の新設に相まって沿岸国に漁業資源に対象を限定した漁業専管水域を設定できるとして、経済水域と同じく沿岸より200カイリとされています。

 

※国連海洋法条約第7部(公海)の規定はすべて、実線部分に適用される。また、航行の自由をはじめとする一定の事項については、点線部分にも適用される。

 

■注:以下の記述は、あくまで一般的な場合の説明です。詳細については、外務省のHP、関係法令等を参照してください。

 

<海上保安庁HPより>

http://www1.kaiho.mlit.go.jp/JODC/ryokai/zyoho/msk_idx.html

 

ここで各定義について説明します(同サイトより)。

 

内水-領海の基線の陸地側の水域で、沿岸国の主権が及びます。ただし、直線基線の適用以前には内水とされていなかった水域を内水として取り込むこととなる場合には、すべての国の船舶は、無害通航権を有します。

 

領海-領海の基線からその外側12海里(約22km)の線までの海域で、沿岸国の主権は、領海に及びます。ただし、すべての国の船舶は、領海において無害通航権を有します。

 

接続水域-領海の基線からその外側24海里(約44km)の線までの海域(領海を除く。)で、沿岸国が、自国の領土又は領海内における通関、財政、出入国管理(密輸入や密入国等)又は衛生(伝染病等)に関する法令の違反の防止及び処罰を行うことが認められた水域です。

 

排他的経済水域-領海の基線からその外側200海里(約370km)の線までの海域(領海を除く。)並びにその海底及びその下です。なお、排他的経済水域においては、沿岸国に以下の権利、管轄権等が認められています。

 

http://www1.kaiho.mlit.go.jp/JODC/ryokai/zyoho/msk_idx.html

 

 

この問題において、1964年3月21日の朝日新聞の解説は次のようにされています。

 

1958年の国際海洋法会議で採択された、『領海及び接続水域に関する条約』(あと一国が批准すれば発効する)によれば、沿岸の低潮線をそのまま基線とし、これから12カイリの平行線を引いてその内側を専管水域とすることになっている。

 

しかし、この規定には特例があり、「沿岸線が陸地に深く入り込み、また入り組んでいる場合や、沿岸にそってごく近い距離に一連の島があるようなところでは、適当な地点を結ぶ直線を基線とすることができる」とされている。韓国側はこの特例をタテに、済州島と朝鮮本土周辺の島とを直線基線で結び、済州島と朝鮮本土との間の海を基線の内側に取り込もうとしている。

 

『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第三巻 勁草書房(一〇九頁)

 

ところが直線基線の引き方にも限度があり、この特例でも「直線基線は沿岸から著しく離れていはならず、また直線基線の内側は内水となるために十分なだけ密接に陸地と連関しているものでなければならない」との但し書きがある。

 

済州島の東と西の両水域は、日本漁船の底引き、トロール漁などの主漁場であり、韓国側の主張をそのまま認めれば、操業に重大な影響を及ぼすばかりでなく、直線基線の内側は内水として韓国の主権が強く行使されることになってしまうため、日本側はあくまでも国際慣行を尊重し済州島を本土から切り離して基線をきめるべきだとの主張を崩していない。

 

漁業問題のうちでもこの問題が最大の難関となっており、韓国側も漁民に対する考慮などから、基本的な主張をほとんど変えていないため、かなり高度な政治折衝が必要とみられている。

 

以上が朝日新聞の記事内容でした。

 

次回は、漁業問題における日韓双方の具体的やり取りについて説明したいと思います。

 

 

<参考資料>

 

・『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第三巻 勁草書房

 

・出典 株式会社平凡社/世界大百科事典 第2版について

https://kotobank.jp/word/%E6%BC%81%E6%A5%AD%E5%B0%82%E7%AE%A1%E6%B0%B4%E5%9F%9F-53190

 

・『領海等に関する用語』 海上保安庁ホームページより

http://www1.kaiho.mlit.go.jp/JODC/ryokai/zyoho/msk_idx.html