前回の記事『‐新シリーズ・朝鮮統一と日本を考える その7(朝鮮統一問題の国際的側面と日本④)‐』(https://ameblo.jp/epikutetosu/entry-12296301818.html)から2か月近く経ってしまいましたが、東アジアの現代史を紐解く作業を続けていこうと思います。

 

 

1964年の朴正熙の「戒厳令」以来、なりゆきを見守っていた韓国の学生たちが再び意志を発表したのは10月26日のことです。

 

この日、ソウル文理大学生約200人は、校庭の『四・一九学生革命記念塔』の前にあつまり、「学園の自由を主張し、政府の施策を批判する糾弾大会」を開きました。

 

彼らは「韓日会談を再開しようとする画策をすみやかに放棄せよ」と主張し、弾劾文を発表、「3月24日以来のデモは正当な民族の良心の示すものであり、民族の良心に逆行する韓日会談を座視することはできない」と決意を表明しました。

 

 

また学生たちは、日本外交官の韓国における策動に抗議しており、10月から韓国穀倉地帯各地で、農民たちが政府の農業政策に対し、はげしく抗議する集会やデモなどがあちこちで目立ちはじめ、同月31日、そして翌11月1日に、韓国政府が前例のない農民に対して「訴える」布告を各新聞で発表し、事態はかつてないほど深刻な状況になっていました。

 

その前の10月26日から、韓国全域にわたり『韓米合同非正規軍野外演習』が行われ、これはアメリカ軍韓国軍現地警察までも参加する「ゲリラ掃討」演習です。

 

昨今「北朝鮮の脅威」に対する『米韓合同軍事演習』が、北朝鮮が「核武装する」はるか前から行われていたのであり、名目は「反共主義」による大国の示威行動で、このような状況にあらわれているアメリカの政策は、ジョンソン政権の手によって遂行されました。

 

 

それは『桂・タフト協定』にみられるほど長い歴史的背景を持つ侵略政策であり、殊にアメリカの対韓援助を削減して、米国の世界戦略の一環として日本から韓国政府への経済・軍事援助を強めるという「構想」は、ジョンソンのドル防衛を焦る孤立主義、保護主義にかなうものでした。

 

10月3日の大統領選挙において、ジョンソンはゴールドウォーターを破りましたが、ゴールドウォーターの得票は40%であり、日本の保守系左派の有力な外交筋の間でさえ言われている危惧は、次のような「周恩来の予測」とも一致するものでした(社会党使節団との談話より)

 

 

「一方、アメリカがひきつづき失敗する状況のもとで冒険をやる可能性にも備えなければなりません。したがって、たとえその可能性が大きくなくても、どうしてもこの危険を指摘しなければなりません」

 

「なぜならゴールドウォーターの綱領があらわれたからです」

 

「たとえ民主党が勝ってもその影響を受けないわけにはいきません」

 

 

周恩来が危険視する「ゴールウォーターの綱領」とは何なのか。

 

調べてみると、ゴールドウォーターはアメリカの上院議員(共和党)で、アリゾナ州でポーランド系ユダヤ人であり、バージニア州ストートン陸軍学校およびアリゾナ大学出身。ベトナム戦争中は原爆使用を含む戦争拡大政策を唱えるなど強硬な反共的立場を堅持したそうです。

 

 

いわんや、日韓会談強行は、アメリカの世界戦略からすると、自国の利益第一の緊急を要する政策であり、インドシナ戦争でどのような態度に出る場合にも、他方で「マレーシア」とともに固めておかなければならない政策でした。

 

彼国の「帝国政策」からすれば、ベトナム戦争での孤立とは異なり、日韓関係では日本、そしてマレーシアではイギリスの力を利用しやすい現実がありました。

 

 

<参考資料>

 

・『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第三巻 勁草書房