先の停戦協定に続く、各国の具体案が話し合われたジュネーブ会談は、主に「外国軍隊撤退」の方法朝鮮半島の「統一問題」が討議されたわけですが、国連諸国側朝中ソ各国の双方提案の要旨を分類すれば次の通りになります。


・外国軍隊の撤退


南朝鮮(大韓民国)代表━中国軍は南北統一選挙実施一ヵ月前に撤退。「国連軍」は南北統一が国連に確認されるまで撤退してはならない。


アメリカ案━上に同じ。つまり上記はアメリカ案を代弁させたもの。


北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)案━すべての外国軍は六ヵ月以内に撤退する。


中国・ソ連━上に同じ。



・統一問題


北朝鮮案━統一朝鮮政府を構成するための国会総選挙を全朝鮮(半島全域)で行う。その準備のため南北両政府と民主的社会団体代表を含む全朝鮮委員会をつくる。全朝鮮委員会は選挙の自由を保障するため、外国や行政当局やテロ団体の干渉を排除することのできる選挙法を起草し、選挙の自由を保障する諸措置を講ずる。極東の平和維持に大きな関心を持つすべての国家が、朝鮮の平和的発展を保障する必要性を認め、朝鮮統一の成就に寄与する諸条件を造成しなければならない。


ソ連案━全朝鮮自由選挙を行う。代議権は南北の人口に比例させる。南北の代表による全朝鮮機構をつくる。選挙を観察するため適切な国際委員団をつくる。平和の破壊をふせぐため極東に直接利害関係をもつ国々が諸責任を負担する。


中国案━外国の干渉を排し、自由な全朝鮮選挙を行う全朝鮮委員会を援助するため、中立国委員団に選挙を観察させる。


イギリス案━比例代表制の原則により、中立国監視のもとで全朝鮮総選挙を実施する。



・平和の強化に対する国際協力


中国案━中国、ソ連、アメリカ、イギリス、フランス、南北朝鮮の七ヵ国による国際会議によって対策を協議する。



このような提案がそれぞれ行われ、中立国観察のもとでの総選挙という点では社会主義諸国側と、「国連」諸国側の意見はおおむね一致したのですが、結果孤立したアメリカ代表ダレスは突然帰国してしまいました。


しかし、イギリス、フランスをはじめ他の「国連側諸国」はなおこれを支持し、5月22日には韓国政府代表もこれを承知せざるを得ないところへ追い詰められました。しかしその後、アメリカ、韓国政府代表は会談破壊工作にはげしく努力し、ついに6月15日「国連」側16ヵ国共同声明を発表して、会談を潰してしまったのです。


先の朝鮮での戦争では、「北朝鮮がはじめに攻めてきた」とか色々と論争があります。しかし大事なこととして、大局的な歴史を俯瞰すると、本来ならば戦後スムーズに半島全域での国家が樹立されるはずだったのに、アメリカの覇権戦略に振り回され、ついには南にその傀儡政権が樹立し、そもそもの原点としての「民族自決」の国を朝鮮民族自身の手から奪ったことに始まります。


これは思想信条は問わない問題です。



そしてさらに酷いこととして、アメリカは朝鮮戦争後のジュネーブ会談における「統一最大のチャンス」を、国連諸国側の賛成も無視にして、ものの見事にぶち壊し、分断を永続化させ、それによる対立の永続化によって極東の平和と安定を大きく損ねた事実です。


これを逃したがゆえに、朝鮮での禍根はより一層拡大し、海外邦民(在日朝鮮韓国人の対立<総連・民団>)の軋轢を生み、今でも地続きの問題として現在にまで繋がっております。


仮に停戦協定後に全朝鮮選挙によって樹立された国は、どのようなものかは想像できません。しかしながら、それは朝鮮民族の手によって樹立された「民族自決」の国であり、他の国々も同様に享受すべきものとして、私たちの国(日本)も含め、すべての国の人間に関わる問題だと思います。


しかし現実は、特定の国の影響によって、無論それは全世界の中で一番力を持つ超大国が、国連をも自らのオモチャにし、気に入らなければ即座に会談をぶち壊し、「民主主義」の名の元に今でも世界中で大虐殺を繰り返している事実があるのです。



<参考文献>


・『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第三巻 勁草書房