前回(その2)で紹介した、『金正恩第1書記の暗殺』を描いた2014年公開の米コメディー映画『The Interview』(ジ・インタビュー)に関する続編記事です。





現在、話題沸騰中とされるこの映画、よく引き合いに出されるものとしてチャップリンの『独裁者』(1940)がありますが、私としては比較すること自体おこがましいものだと思います。




この『独裁者』という映画は、台頭するナチスドイツを描いた喜劇作ですが、単純に「喜劇」とは言い難いとてつもなく深刻さを持った屈指の名作です。ラストシーンで、独裁者ヒトラーに扮したチャップリンが演説するところは鳥肌が止まりませんでした。(『世紀の5分間』よりhttps://www.youtube.com/watch?v=0bOLrMGKkfk )




対する今回の『ジ・インタビュー』にせよ、具体的に伝えたいものは何だったのか、見て残るものがあるのか、単に面白おかしく暴れて、最後は金正恩氏を殺して終わりというお粗末な一本筋で成り立った物語だと思います。


私はまだこの映画を見ておりません。しかし先の記事でも示した前評判がある以上、肯定的には受け取れないでしょう。また、この映画自体は、日本円で50億円というアメリカ映画の中でも「超低級」予算の部類に入るもので、俗に『B級映画』と呼ばれるものです。「金正恩に映画の内容を指図されてはならない」と述べるジョージ・クルーニー氏にせよ、彼らに支払う『ギャラ代』だけで映画予算の大半を持って行かれてしまう寸法です。


現在のところ、映画の成り行きはわかりませんが、映画館の半数以上で放映禁止となった以上、ゆく先次第では何とか赤字は回避できたとしても、利益率としてはかなり低いものだと推測します。




(最終シーンにて、爆発で頭部が吹き飛ぶ金正恩氏の姿)




無論、このような「バカ映画」は『表現の自由』において放映されることを完全には否定しません。


しかし、これが『同じ独裁者』である習近平氏やプーチン氏向けられることは決してないでしょう。



なぜならば、アメリカという「前科」多き国において、自分に直接影響を与える大国は別にしろ、「弱小国」が世界の超大国に逆らうことを到底許せない、そういう傲慢な「帝国としてのアメリカ」が存在し、世界中の属国を従える立場として、日本のように「酷いことをすればするほど付き従う」国でなければ満足できず、かたや半世紀以上も制裁を課しているのに未だに滅びない北朝鮮が憎くて仕方がなく、それを『表現の自由』のもとに罵倒・嘲笑し、今回のような『ハッキング』事件が起きれば、それを機に「テロ支援国家」再指定も含んで徹底制裁に打って出ようとしております。


過去にも似たような出来事はありました。


90年代にソ連が崩壊し、完全な支援者を失った当時のキューバにも、アメリカは非情にテロ支援国家指定を含む各種制裁を強行しました。それは結局のところ、前述の内容に沿ったものであり「アメリカの裏庭」で自主独立はありえない、革命前のバティスタ政権にしろ、アメリカの属国を通り越して半植民地状態でしたし、根底に潜むのは徹底した『超大国』としてのメンツと威厳です。



それは、(その1)にて示した「北朝鮮人権問題」における国連の安保理決議を筆頭に、黒人を殺害しまくっている『世界一の人種差別主義国家』であるアメリカが主導して訴えるという、矛盾と奇妙な構図があり、『ハッキング騒動』にまで発展したコメディー映画に関しても、中国やロシアへは絶対やらない「実名」による暗殺を題材として、そのダブルスタンダード性をさらけ出しました。



結論としては、どんなに世界が民主化されようとも、『大国による支配』は古今東西永遠不変のルールであり、その中での小国たちの意見は、まったく反映されないのです。




〈参考資料〉


・朝日新聞 2014年 12月25日 木曜日/2014年 12月28日 日曜日


・日本経済新聞 2014年 12月26日 金曜日