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実は自分は小さいときからバイオリンを弾いていたわけではありません。
小学校に上がるくらいからピアノを始めて高校時代はホルン。
通学の満員電車の小田急線にベルのはずれないフレンチホルンやアルトホルンを毎朝持ち込んでいたわけだからそりゃあ冷たい視線を浴びた。
もともと楽器に対しては不器用な方じゃなかったし、色んな楽器をいじくって遊んでいたし、ギターや尺八、ビオラとアンサンブルで足りないところの穴埋め要員としてそれなりに重宝されていたのではありますが・・・。
大学時代からオーケストラ活動を始めてデビューはブラームスの第2シンフォニー。
パートは勿論セカンドの一番後ろの邪魔にならないところ(笑)
夏季休暇中にバイトして貯めた、なけなしのお金を持って楽器屋へ。
「いらっしゃいませ。何をお探しですか」
「バイオリンを見せていただきたいのですが・・・」
「どういったものを?」
「セカンドバイオリンです」
「・・・・・・」
そりゃあそうだ。
そんなバイオリン売ってるはずがないのだ。
楽器屋にしてみれば、オールドなのか新作なのか、ドイツものがいいのかクレモナがいいのか、そういったことが聞きたいわけなのだ。
しかし、さらに勘違いは続く。
「ではこれなんかいいかもしれませんよ」
差し出された一本の楽器。
セカンドバイオリン・・・楽器屋さんは、もう自分のことをものすごい弾き手で、つまりはサブというか予備のバイオリンを改めて購入しにきたんだとすっかり思い込んでしまった模様。
しっかりとコーヒーもいただいて(笑)
・・・で渡された楽器の値札は予算よりも0の数が一個から二個近く多い。
弓を渡され、そこで音を出したあたりから、楽器屋は自分がえらい勘違いをしていたことに気づく。
結局は手ごろなお値段でノンラベルのドイツ製というオールドバイオリンを手に入れたわけだけど、それから先は何丁も楽器は買い換えてきたわけで、
もうかれこれ20年以上放置していたその“初代”楽器を都内の大手楽器店に持っていった。
「すみません、これって引き取っていただけますか?」
しばらく眺めた後で、なんとまぁ一回飲みにいけるかどうかって言う金額を提示されて、別に自分はそれでもかまわないから、結局は手放したんだけど、
その後ビックリな展開が待っていたわけです。
数日後、その楽器屋に行くとたくさんのバイオリンの中に堂々と!!陳列されておりました。
しっかりと、ラベルも新品なものがつけられて、エフ字孔の中から見えてます。
興味深々でそこを覗き込むと、ナント・・・チェコ製???
適当な製造年と国籍まで別物にされて、ついた値段は買ったときよりも高い!!
間違いなく自分が一回分の飲み代で手放した楽器です。
駒のあたりに当時飼っていたウサギのタマちゃんが引っかいたあとがしっかり残っていたしね。
学生時代、ドイツ製の楽器なら飲めるだろうとクラスの悪友が酔っ払ってドボドボとビールをかけ、
リハ中に酒臭いと白い目を向けられるもんだから、仕方なく匂い消しに正露丸を楽器ケースに入れておいたらもっとひどい事態になって・・・。
あの楽器は、その後誰かに買われていったのだろうか?
もし、駒の付近に引っかき傷のあるチェコ製のラベルの貼られたオールド楽器を持ってる方を見かけたら、よろしく面倒見てやってください。
ちょっと鳴りの悪い楽器ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします♪