作品は作者の手を離れた途端に
作者のものではなくなる。
オーディエンスが生きている文脈の中で
新たな心象風景に溶け込む。
その心象風景は、オーディエンスが
見たいように観ている世界。
そして、
たまたま、多くのオーディエンスに生まれた
心象風景の類似性を強調する職業的批評家
によって、あたかもその作品自体が
オーディエンスの心象風景を創り出す
力があるかのように錯覚する。
その幻想的心象風景は虚構なのに、
市場経済の中に飲み込まれていく。
芸術に答えはない。
あるのはテクニック、流派、技法の
左脳優位な理論的信条だけである。
サイコセラピー同様に、絵画においても、
作者の数だけ流派、技法がある。
人間には、作品の共通性の同定を好む
脳のオーセンティックな幻想を抱く習性
がある。
そこを狙って斬新で刺激的な作品、
人気のある作品を創り出す能力が
高く評価される。