あらすじ
海外で亡くなった日本人を日本へ、また日本で亡くなった外国人を母国へ送り届ける――
そんな“国際霊柩送還士”たちの仕事を描くヒューマンドラマです。
舞台は、羽田空港に拠点を置く小さな会社「エンジェルハース」。主人公たちは、さまざまな事情や背景を抱えた遺族と向き合いながら、亡くなった人を「最後にきちんと帰す」ため奔走します。
製作国・地域:日本上映時間:138分
監督
堀切園健太郎
脚本
古沢良太
原作
佐々涼子
出演者
米倉涼子
松本穂香
城田優
矢本悠馬
野呂佳代
徳井優
遠藤憲一
谷田歩
織山尚大
鎌田英怜奈
向井理
木村祐一
鶴田真由
入山法子
アレックス JD
原日出子
佐藤緋美
生瀬勝久
つぶやき
「死」を扱っている映画は数多くあるけれど、本作が少し特別なのは、“亡くなった後に残る時間”を丁寧に描いているところだと思う。物語の中心にいるのは、海外で亡くなった人を祖国へ送り届ける仕事をする人たち。決して派手な職業ではないし、華やかなヒーローが登場するわけでもない。それでも、彼らの仕事はどんな大事件よりも重く、静かに胸に響いてくる。
この映画には、さまざまな形の別れが描かれている。突然の事故、遠い異国での孤独な最期、長い人生を終えた旅立ち――どれもそれぞれに痛みがあり、観ている側の心をじわりと締めつける。ただ、その中でも特に胸の奥に残ったのは、赤ちゃんとの別れを描いた場面だった。大人の別れには思い出や言葉がある。それでも耐え難いのに、これから始まるはずだった未来ごと失われてしまう小さな命との別れは、理屈では受け止めきれないほど静かで、そして残酷だ。劇中の沈黙の長さが、その悲しみの深さを何よりも物語っていたように思う。
映画が始まってすぐに感じるのは、空港という場所の独特な空気だ。出会いと別れが常に交差する場所。その中で、遺された家族の感情に寄り添いながら、亡くなった人を“ただの荷物ではなく、ひとりの人生として扱う”姿勢が描かれる。派手な演出は少ないが、その分、細かな所作や言葉の選び方がリアルで、観ている側も自然と背筋が伸びる。
本作は、単に「泣かせる映画」というわけではない。もちろん感情が揺さぶられる場面はあるが、それ以上に印象に残るのは、人が誰かを想うときの静かな優しさだ。遺族の葛藤や後悔、国や文化の違いによる価値観のズレなど、簡単には答えが出ないテーマを扱いながらも、物語は押しつけがましくならない。むしろ、「正解はないけれど、できることはある」という温度感で進んでいく。
映画版になって感じたのは、スケールよりも“深度”が増したことだ。仕事としての緊張感だけでなく、登場人物それぞれが抱える個人的な思いがじわじわと浮かび上がってくる。誰かを送り出すたびに、彼ら自身もまた何かを抱え、少しずつ変わっていく。その積み重ねがラストに向けて効いてくる。
映像面では、空港や移送の描写が過度にドラマチックになりすぎず、ドキュメンタリーのような落ち着きがあるのも好印象だった。だからこそ、ふとした表情や沈黙の時間が強く残る。音楽も感情を煽りすぎず、観客の余白を尊重しているように感じられた。
観終わったあとに思ったのは、「死を描いた映画なのに、生きている人の映画だった」ということ。誰かがいなくなったあとも、日常は続く。その中で人はどう気持ちを整理し、どう前を向いていくのか。派手なカタルシスではなく、静かな納得をくれる作品だった。
