今日のブログは今月の歌舞伎座昼の部『夏祭浪花鑑』の感想です。

私も2013年10月に愛之助さんの『夏祭浪花鑑』に
出演させて頂いた事がありました。

この時は通し狂言でしたので序幕に珍しい『お鯛茶屋』や『内本町道具屋』
それに大詰め『田島町団七内』『団七内大屋根』も上演されました。


場所も大阪道頓堀の松竹座で一寸徳兵衛に亀鶴さん 女房お辰に上村吉弥さん 
釣舟三婦に鴈治郎さん 団七女房に壱太郎さん そして脇に至るまで
関西在籍や上方歌舞伎塾出身の役者さんでとても上方色が濃く
如何にも浪花の鏡でした(笑)


それに比べれば今回は歌舞伎座での上演ですし、愛之助さんは別として
役者さんも菊之助さんや巳之助さん 莟玉さん 米吉さんなど
関東出身の方が多いので幾分上方色が薄くなったのは否めません

その中で歌六さんの釣舟三婦は別格でしたね。
ニン的にも今や三婦はこの方が最高峰でしょうか。


住吉鳥居前の場で、コメント欄でもご指摘がございましたが、
下剃りの三吉の床屋がなるほどど真ん中に位置するのは
私も違和感を感じました。

鳥居と屋台の間隔が狭く感じましたので本来はもう少し下手寄りだったかな?

と思います。


今回私は配役を見ないでお芝居を見ましたので三婦内では、
素敵なお辰の役者さんが初めは誰だかわかりませんでした(笑)

「あれ?こんな女形さんいたかな?」と幕になって家人に「誰?」と聞き
「愛之助さん」と知って驚きました(笑)

ご一緒する事の少ないお家のお弟子さんや一部の名題さんに関しましては、

正直3階席から見てもどなたかわからない場合もありますが、

今回に関しては、主要人物にも関わらず、「知らない女形さん・・・」

見ながら頭にハテナが飛びまくっておりました。



以前はよく女形もなさっていたそうですが、そう云えば私、
愛之助さんの女形、あまり見た事がありませんでした。

まさか愛之助さんが二役だとは想像もしておりませんでしたので、

全くわかりませんでした。

 

「可愛かったし、私は女形を続けてほしかったから、久しぶりの女形で

お辰みられたのは嬉しい」と云うのは、家人の言葉。



早替わりの演目ではありませんが団七との二役は鮮やかでしたね。
これは今後も愛之助さん『夏祭浪花鑑』の大きな武器となりますね。

長町裏の嵐橘三郎さんの義平次とのやりとりはもう何回も
コンビを組まれておられるので自然に見ておられました。

でも立回りになってから義平次と団七の見得の時、
義平次のガマ見得と団七のサギ見得は本来は同時でないといけないのに
それぞれが別の時でしたね。

また殺しの後の若い衆の「ちょうさじゃ」「よいやさじゃ」の陰の声も、
團七の見得の時 その後の井戸での洗いの時の声のかけ処が違うように感じました。

それに神輿と共に若い衆が舞台に入って来てからも声に元気がない様な・・・。
盛り上がりにかけておりましたね。

猿翁旦那が団七の時は私が祭りの若い衆の音頭をとっておりましたので
元気のなさと間の違いにちょっと戸惑いを感じました。

もっともこれも主役の方の演出によりますので何とも云えませんが・・・。



最後に団七が若い衆の腰から豆絞りの手拭いを取ります。

これも顔を隠したいから取ったらすぐに頬かむりをするのですが
愛之助さんは「悪い人でも舅は親、親父どん 許してくだんせ」の台詞の後
花道に入る時に頬かむりをされていました。

どちらがいいとか悪いとかは云えませんし、歌舞伎にはありませんが

私の見慣れたやり方ではありませんでしたので、気になりました。
前の役者さんがやったお役、やり方を見ると云う事がいかに大事か
また自分の次につながる事なのだと云う事を改めて感じました。


見終わった後、「芝居出ているのと見ているのとどっちが大変?」と聞かれ

しばし悩みました。

 

まあ、芝居に出ている時間や場面にもよるのですが・・・

案外見る方も体力が要るんだなと、思ってしまった芝居見物の一日でした(笑)