通し狂言の中で舞踊の部分だけ独立して上演される事はよくございます。

『仮名手本忠臣蔵』の三段目『道行旅路の花婿』通称「落人」
また『義経千本桜』の四段目『道行初音旅』通称「吉野山」等々。

これらは物語の中の舞踊劇ですが見取り狂言としてこの場面だけの上演も
ままございます。


同じく今年の7月歌舞伎座で上演される『裏表太閤記』も通し狂言として作られました。
その切狂言として最後に舞踊劇を持って参りました。

天下を収めた太閤秀吉が山里曲輪の落成を喜び大名たちの前で
三番叟を舞います。

そこへ忍びの者が現れ舞踊立ち回りとして踊りながら戦います。

本来はありえないシチュエーションですが、これが成り立つのが歌舞伎です(笑)


この舞踊劇、先の『落人』や『吉野山』の様にこの部分だけ独立して
『太閤三番叟』として舞踊劇となりました。

これで当時の『裏表太閤記』の昼の部の舞踊劇『華果西遊記』と
夜の部の『太閤三番叟』二つの舞踊劇が独立した演目として
上演されるようになりました。


『裏表太閤記』の通し狂言は1度しか上演されておりませんが、
『華果西遊記』も『太閤三番叟』も何回も再演されております。


『太閤三番叟』の太閤秀吉も猿翁旦那だけでなく
右團次さんや喜多村禄郎さんや笑三郎さんも勤めておられます。

笑三郎さんは面白い事に変則でこの演目を勤めておられます。

 

2010年の新歌舞伎座で上演された時は、昼の部では太閤秀吉を

当時の段治郎さんが勤められ、夜の部では主役を淀の方として書き換えて

笑三郎さんが勤められました。


昨日の明智光秀の弟、明智左馬之助を架空の妹 お通に変えた
猿翁旦那ならではのお役に対する自由な発想ですね。
 

 

その後の2014年おもだかや襲名巡業公演の時には、笑三郎さんは

淀の方のお役でしたが、途中から代役として、太閤秀吉の役を勤められました。

 

形があると云えばある、決して無いとは云いませんが、自由な発想の余地がある

そんな舞踊劇ですね。

 

もう一つの『華果西遊記』も再演の度に少しずつ変化して参りました。


ですが今回の夜の部のだけの上演では『華果西遊記』と『太閤三番叟』の
二つの上演は無理かもしれません

今回はどういう形で『太閤三番叟』が上演されるでしょうか?
これも楽しみです。