歌舞伎座『芸術祭十月大歌舞伎』も半分の公演が終わり、後半へ入りました。

今月は第3部の「盲長屋梅加賀鳶」は加賀藩の鳶衆の
花道の勢揃いのないのが少し残念ですね。

やはり加賀鳶勢揃いの花道の名乗りはお客様の見どころ、聞き所として
ワクワクされる場面だと思います。

ただ道玄を勤められる役者さんの場合、必ず加賀鳶の頭の梅吉と
二役されるのが常となっております。

その場合、お茶の水の殺し場の道玄、木戸前勢揃いの梅吉、盲長屋の道玄と、
行って来いの早替わりはしんどいものです(笑)



私がこの「盲長屋梅加賀鳶」小按摩寒竹で初めて出させて頂いたのは
1966年10月の帝国劇場こけら落し、二代目中村吉右衛門襲名披露公演だった事は
以前にも書かせて頂きました。この時私14歳、中学2年でした(笑)

道玄、梅吉は二代目松緑さん 鳶頭の松蔵は初代白鸚(八代目幸四郎)さんでした。

花道の勢揃いでは、

加賀鳶巳之助 = 中村又五郎(先代)さん

加賀鳶尾之吉 = 市川高麗蔵(先代)さん

加賀鳶魁勇次 = 市川染五郎(現白鸚)さん

加賀鳶竹五郎 = 中村吉右衛門(二代目)さん

加賀鳶石松 = 尾上辰之助(初代)さん

加賀鳶兼五郎 = 市川新之助(十二代目團十郎)さん

加賀鳶音吉 = 加賀屋福之助(現梅玉)さん

加賀鳶房吉 = 中村玉太郎(現東蔵)さん

加賀鳶弥太郎 = 市川男女蔵(現左團次)さん

加賀鳶五郎次 = 中村福助(高砂屋)さん

と、まあそうそうたるメンバーでしたね(笑)
こんな豪華な勢揃いはあとはもうなかったのでは・・・。



私、出番の前に必ずこの花道の勢揃いを見ておりました。

この加賀鳶、切狂言だったのですがはじめはどうしても時間が出ず、
質店で打ち出しとなっておりました。

つまり舞台の途中で、上演が終わってしまうと云う事ですね。
筋をご存じの方にとっては「・・・」と云う感じだったのではないでしょうか。

5日目ころから舞台も早まり、大詰めの道玄宅と赤門前が上演される事になり
私は大喜びで質店の後、続けて花道から見ておりました。


ですが、その時私は初代白鸚さんのお手伝いをしていて
質店が終わると旦那がお化粧を落として着替えて帰られるまで楽屋に
いなくてはいけなかったのです。

それをすっかり忘れ、お芝居にのめり込んでいて兄弟子やら付き人の方から
大目玉を頂きました(笑) 

でもそれくらい舞台が面白かったのです。
白鸚旦那はニコニコ笑っておられましたが・・・。

次の日からお許しを頂いて、赤門前も毎日見てよい事になりました。

質店の松蔵と道玄の二代目松緑さんと初代白鸚さんのやりとり、赤門前の立ち回り、
本当に面白かったですね。 今でも目に残っております。

怒られても見ていてよかったと今でも思います。

お芝居は「この時に」と思わないと、2度目はないと思います。
いいお芝居は本当に一期一会、お客様もそう云ったお芝居は記憶に残られますね。