今月の歌舞伎座第1部『車引』と『猪八戒』の幕間は30分です。
第1部に限らず現在のお芝居の上演時間では幕間は30分が多いですね。

客席内で飲食が禁止されている今現在、この時間を持て余すと云う方も

おられるかもしれません

第3部の『ふるあめりかに袖はぬらさじ』の1幕と2幕の幕間は20分ですか?


コロナ前の時は通し狂言や長い演目の時、25分や15分の幕間と云うのも
けっこう多かったのですが現在は仕方ありません

お客様にとりましては、長いかも知れないこの時間ですが、
幕間の30分この間に『車引』の大道具を片付け『猪八戒』の大道具に
換える作業が舞台上で行なわれております。

おそらく、大道具さんも人数的には少ないのではないかと思いますので、

いつもよりも大変かもしれません

『車引』は地舞台ですが『猪八戒』は舞踊ですので所作舞台、
当然 舞台全面に所作を敷く作業が行われ それから『猪八戒』の
大道具を作る作業が行われている訳です。

お客様は休憩時間中ですからお手洗いに行かれたり 外の空気を吸いに
ロビーに出られる事が多いでしょうが、もし客席に居られたら
花道の所作板を敷く作業は見られる訳ですね。


だいたい15分前くらいには大きな転換の作業も終わり舞台装置の確認に入り
その頃から上手の山台に竹本さんや鳴り物さんたちが緋毛氈に座られ
演奏の準備を始められます。

私たち村人も15分~10分前くらいにそろそろ集まり出します(笑)

そして舞台上では仕掛けの点検や孫悟空や沙悟浄が天井から登場する
仕掛けの安全確認を行います。


その点検に現れた青虎さん

毎日この時間に来られますが、出番の関係で、毎日ここでしか会いません(笑)

 

・・・なんのポーズだ??(笑)

その後ろでは猪八戒が出入りする仕掛けの点検を猿之助さんのお弟子さんたちが
入念に行っているところです(笑)


そんな事を行っているうちに5分前のブザーが鳴り私たちは幕開きの位置に着きます。

その頃に猿之助さんが舞台に現れ地方さんたちにご挨拶。

猿之助さんは『車引』の藤原時平から『猪八戒』の女形に早拵えですから
準備が大変ですね。

幕間時間は30分ですが幕の内ではこんな作業が行われていて
大道具さんにとっては30分でも短いくらいでしょうか?
でもお客様をあまりお待たせする訳にも参りません


幕間は客席と舞台上、定式幕1枚隔てての空間ですがまるで違う世界が
ここにはございます。


時間が来て柝が入り黒御簾での鳴り物が鳴り、幕が段々開きますとそこには
閉ざされた別々の世界が瞬時に一体となる新しい世界がここに飛び込んで参ります。

歌舞伎の幕開きはお客様、舞台に立つ役者 曲を演奏する地方さん等々
それぞれが独特の印象をもつ一瞬です。

私たちは二つの世界が解き放たれ混ざり合う瞬間を毎日体験しております(笑)