先日始まりましたNHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』
初回を見ました限り面白そうで、これからの展開に期待が持てますね。

とてもユニークな源頼朝(大泉洋さん)ラストに義経(菅田将暉さん)や
後白河法皇(西田敏行さん)平清盛(松平健さん)なども登場して
何やら怪しげな雰囲気に・・・(笑)

今月の歌舞伎座『義経千本桜 四の切』でもこられの人物は重要な位置を占めております。
 

ん?義経しか出て来てないやん?と思われる方も多いでしょう(笑)

『義経千本桜』の通し上演の折の序幕「仙洞御所の場」で源義経は御所を訪れ
後白河院の前にて屋島の合戦で平家が滅亡した様子を物語ります。
その恩賞に「初音(はつね)の鼓」が下されました。

義経はありがたく頂戴すると、あとから院の寵臣左大将藤原朝方より
「これは義経の兄源頼朝を討てという院宣である」という旨を告げられます。

義経は困惑しますが、鼓を返すと院宣に背くことになるため、
打たなければ(討たなければ)よいと、一旦拝領することにしたのです。

と云う経緯があるのですが、残念ながら私はこの場面は、

歌舞伎では見た事はありません。
我が家にあります『名作歌舞伎全集』も、序幕はその後の「堀川御所の場」からしか
載っておりません。

文楽の解説にはありますので、文楽の上演ではあるのでしょうね。
残念ながら私はこちらも拝見したことがありません。

ま、お芝居ですから歴史的な事実ではありません。
そう云う事があったと云う前提で、お芝居は進んで参ります。
初音の鼓にはそういう経過があると云う事は、物語の端々では語られておりますが、
詳しく知っておりますと、また印象も変わりますね。

『吉野山』や『四の切』に於いて静御前が狐忠信を呼び出す際に鼓を打ちますが
これは楽器として打つのであって、あくまでも打つのは静御前。
義経とは立場が違います。

『四の切』で佐藤忠信が二人になった所での義経の台詞
「わが手で打たれぬ(頼朝を討たれぬ)鼓の妙音 きっと詮議申しつくるぞ。」
と云うのは義経が鼓を楽器として弾けないと云う意味ではありません(笑)

「初音の鼓を打つ」と云う事は「頼朝を討つ」ことを承認したことになるからです。
義経の台詞をお聞きになってここのところをお間違えなく。

そして、本来はこの初音の鼓、持っていなければならないのですが、
狐忠信の親に対する孝心を愛で鼓を与えてしまいますね。

ま、これは歌舞伎の嘘と思ってくださいませ。
冷静に考えると、院からもらったものをあげていいの?でしょうか?(笑)

荒法師の事を告げ、惑わした後に 狐忠信は初音の鼓を持ち 元の古巣へ帰って行きます。
と云うのが、今月見て頂く事の出来る 『四の切』の幕切れなのです。

以前、猿翁旦那がさらにその後に「蔵王堂の場」を上演された時には、
義経や佐藤忠信が平教経と相対した時、狐の軍団が忠信に加勢にやって参ります。

そして本来のお話は、頼朝を討てとの院宣は左大将藤原朝方の勝手な謀略で
捕らえられた藤原朝方の処分を義経に任せるとの後白河院の言葉を
川越太郎が伝えにやって来るのです。

平家討伐も藤原朝方が仕組んだ事だと知り、平教経は平家一門の敵として藤原朝方を討ち
その後忠信の兄 継信の敵として佐藤忠信に討たれるのでした。

と、壮大な物語になっておりますが、ここまで詳しく上演されたことはありません

それでもやはり、源頼朝や平清盛は出て参りません。
出ては参りませんが、物語の背後には、ちゃんと存在しているのですね。
 

さて、この時代を扱った大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では
今後このお話がどのように展開して行くでしょうね。

また、工藤祐経も・・・えっと・・・どうなっていくのでしょうね。
やや一昨年のトラウマが蘇った気も致しますが・・・(笑)

楽しみに待ちたいと思います。