昨夜NHK・BSプレミアムでの勘九郎さんの『忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段』を見ました。

残念ながら前編は見逃したのですが、後編だけでも十分面白かったです。

「中村仲蔵」のお話はこのブログでもよく書かせて頂きましたが、
落語としての「中村仲蔵」で ドラマとしては初めてでしょうか?

ドラマもよくできていて勘九郎さんがとても好演でした。

出演俳優も七之助さん 松也さん他 ほとんど知っている中村屋ご一門の
歌舞伎の出演者で久方ぶりにワクワクしながら見たドラマでした(笑)

早い名題昇進を仲間からねたまれ 狂言作者からも悉く嫌がらせを受けて
お役は『仮名手本忠臣蔵 五段目』の定九郎ひと役。
山賊衣装に身を包んだ汚れ役で それも見得や大部分の台詞までも削られ

台詞は「五十両」のひと言だけ。

ここで仲蔵が狂言作者にひと言 「先ほどより 先生のおっしゃった段取りをすべて守れば
あとは私の芝居に任せて頂けますか?」

狂言作者は馬鹿にして 「この段取りに芝居のしどころなどあるかよ。」と ボソッと笑いだけ。

しかし仲蔵はどうやるかの工夫はまったく出て来ず それでもめげず、
ある日居酒屋で出くわした雨に降られた破れ傘の浪人のなりを見てヒントを得 
工夫に工夫を重ねる仲蔵。

当時、五段目はご不浄(トイレ)時間 弁当時間と云われて誰も舞台を見ていない時間を
トイレに立たせず 弁当を食べるのを忘れさせ舞台に魅入れさせた仲蔵の演出。

白塗りの化粧顔、黒紋付に朱鞘の刀 出の前に風呂場で水を被り着物にたっぷり水を吸わせ
舞台でそれを絞る演出 与市兵衛から財布を取り 殺した後ニヒルに「五十両」のひと言の台詞

その後イノシシに間違えられ勘平に鉄砲で撃たれた後 口に含んだ血糊を白塗りの太ももに流す演出 
そして舞台中央に倒れます。

本人は拍手も大向うもなく じっと魅入るお客様に「しまった、しくじった~、ちっとも受けない」
と思い込んでいてその後 雲隠れしてしまいますが、次の日の舞台に来た時 
四代目團十郎から褒められ 嫌がらせをしていた狂言作者をも謝らせてしまう・・・。

これは役者冥利に尽きますね(笑)

 

 

私たちにとりましては、なかなかそんな機会はありません。

ですが、スーパー歌舞伎に関しましては、台詞は決まっていたとしましても、

扮装や、動きなどは完全に任される場合もございます。

 

『ワンピース』におきましては、「何とかして幕開きで客の心をつかめ」という事を

云われたわけではございませんが、その空気をひしひしと感じました。

 

幕が飛んで登場するまでは決まっておりましたが、そのあとにどのテンションでひと言目を発するか、

どう歩いて、どう持って行くか。それはほぼすべて私に任されておりました。

 

顔もそうですね、あの隈取も完全にオリジナルですし、かけていたチェーン付きの眼鏡に至りましては、

一度目の舞台稽古を見た家人が「こういう眼鏡みたいなのかけられないかな」のひと言を頂き、

急いで小道具さんにお願いいたしました。


同じくクロコダイルは、衣裳は決まりものとしてありましたが、かつらはすべて私のリクエストで

拵えてもらったものでした。

 

 

この時にどう工夫するか、どうしたらこの役をもっとよりよくできるのか、そういったものは

私はスーパー歌舞伎にてかなり学ばせて頂きましたね。

 


私の事はさておき(笑)

この中村仲蔵が作った五段目の定九郎の型が 現在でもこのままの形で残っております。

ほんとうにいいドラマを見ました。

 



余談ですが、朝のテレビ小説『カム・カム・エブリバディ』に出演中の
上白石萌音さんが仲蔵の女房役で出演されてましたが、三味線の弾き語りがすごく上手で
これは驚きました。

朝のテレビ小説『カム・カム』の安子は英語の台詞が多くて
これも覚えるのが大変だと思っていましたが、まったく違うドラマで三味線の弾き語り、
この人若いのにどこまで才能があるのかびっくりします。

 

私も三味線は弾けなくはないですが、舞台の上では・・・無理だな(笑)

これからの将来が楽しみな女優さんですね。