『仮名手本忠臣蔵』の狂言、抜粋としてある一場面は時々上演されておりますが、
「大序」から「討ち入り」「引き上げ」まで通して上演されたのは国立劇場での
2016年10、11、12月の3ヶ月に渡っての公演が今の所最後です。

 

この時の上演方法は10月が「大序」から始まり四段目「表門城明け渡し」まで、
11月が三段目の「道行(落人)」から始まり 五段目「山崎街道」六段目「勘平腹切」の場と
七段目「祇園一力茶屋」の場面まで。

12月が八段目「道行旅路の嫁入」から始まり九段目「山科閑居」十段目「天川屋義平内」
十一段目「花水橋引き上げ」の場まで1日1回の公演でした。
つまり全部見るのは3ヶ月かかると云う事です(笑)

 

 

江戸時代にはこれを朝から晩まで1日で上演していた訳です。

1日で通して上演されたのは2013年11月と12月の歌舞伎座2ヶ月公演まで遡ることになります。
この時は「大序」から「大詰」まで昼夜公演で通し上演で月替わりで配役が変わっておりました。

 

但し、昼の部の二段目「桃井館松切り」の場と夜の部の十段目「天川屋義平内の場」は
割愛されておりました。

 

つまりどうしても『仮名手本忠臣蔵』は1日で上演するには長すぎるので
どこか割愛しないといけない訳です。

 

 


上方版は少しテンポが早く演出も多少違いますので昼の部に「大序」から「六段目」まで、
夜の部には「七、八、九、十一段目」を上演しますがそれでも「二段目」と「十段目」は
割愛されてしまいます。


現在は三部制となり『仮名手本忠臣蔵』を上演する機会がどんどん薄くなって来ましたね。

 

お客様としてもこれだけ時間のかかる演目ですから2回3回と複数回ご観劇されるのは
なかなか難しいでしょうし、まして全部を1回だけのご観劇ではお疲れになると思います。

 

 

これに加えて残念な事は上方版の『仮名手本忠臣蔵』はさらに上演が難しいと云う事です。
つまりお役を勤められる上方の役者さんが極端に少なくなられた事にも原因がございます。

このまま上方版の『仮名手本忠臣蔵』が埋もれていくのは本当に忍びないです。


それに対して今回の『花競忠臣義士顔見勢』ようにどんどん短くなっての
いいとこ取りの作品はさらに増えていくような気が致します。

 

時代は歌舞伎に対して何を要求しているのでしょうね。

 

新しい作品はもちろん大歓迎ですが、歴史的古典の作品もなんとか復活
順次公演できるようなシステムの構築が、歌舞伎にも必要になって参りました。