今月の第3部『花競忠臣顔見勢(はなくらべぎしのかおみせ)』は
狂言名題に「花競う」とございます。

 

忠臣蔵を題材とはしておりますが、主要となる塩冶義士の面々は
若手の俳優さんたちで猿之助さんと幸四郎さんは義士ではなく
あえて脇の人物として登場して参ります。

 

そこが花競う(若手)忠臣蔵での顔見勢(世)の由来です。
「勢」の文字は溌溂とした若手の演技にご注目を・・・の意ですね。

 

 

幕開きは『仮名手本忠臣蔵』をなぞり「大序」のような場面から幕が開きます。

本来の『二十四時忠臣蔵』のお芝居は討ち入り前夜の24時間を扱っておりますが
今回は討ち入り4日前からのお話です。

 

4日前なのに「大序の兜改め」から始まるのはなぜか?
それはお芝居をご覧いただけるとご納得いただけると思います(笑)

 

 

「大序」の前に解説として口上人形が登場致します。

この口上人形『仮名手本忠臣蔵』では本来、開演5分前から始まるのですが、
最近は開演時間前にこう云った昔風のやり方で催しますと、お客様から

「なぜ開演前に始まるのか?」とお𠮟りを受ける事が多くなりました。

 

江戸時代からの名残なのですが『仮名手本忠臣蔵』はお客様がすでにご存じのお話、
お芝居は日の出に始まり、日の入りに終わると云う興行形態で
お客様は1日中お芝居に没頭され お目当ての場面をご覧になるために
どの時間に来られてもよかったのです。

 

ですから開演前に口上人形が行われていても、それは早くから来られたお客様への
開演前の余興的なものでした。 しかし、現在の歌舞伎の上演方法ではそうは参りません

上演時間は短いですが、開演時間からの口上人形となっております(笑)


この口上人形、先にも書きましたがもともとは配役なども読みあげられ
5分くらいの長いものでした。

口上の最後には昔は客席にて「お茶おタバコなど召しあがり ゆるゆるゆる~と
ご覧下さいませ」などと、云っておりましたが現在では客席は禁煙。

 

その後は「お茶お菓子など召しあがり」に変更されましたが、さらに現在では
コロナ禍の影響で客席での飲食も禁止となりました。

そこで今月はどのように語っているか?(笑)

 

江戸時代ではおそらく「お弁当やお酒など召しあがり」などと
云っていたかも知れませんね。

時代によってやり方も内容もどんどん変化して参ります。

 

もしこのコロナ禍がさらに長引けば3部制が当たり前になり
「かっては、昼夜2部制だったの? へぇ~ 知らなかった」
なんておっしゃるお客様も現れるかもしれませんね(笑)

 

ちなみに今月の口上人形の声は幸四郎さん 猿之助さんお二人が
勤められております。

 

幕が開く前の口上人形にもご注目下さいませ。