歌舞伎座の9月大歌舞伎の第2部『近江源氏先陣館 盛綱陣屋』
本来なら2日が初日でしたが、出演者に数人、コロナの陽性者が出たために
少し遅れて7日に初日を迎えました。

休演されていた 隼人さんと歌昇さんも健康観察期間も過ぎ 
昨日今日あたりから無事に本役に復帰されたそうですね。
まずはよかったです。


お二人のお役は戦場の報告をするいわゆる「注進」と云う役どころです。


隼人さんのお役は信楽太郎(しがらきたろう)と云う「むきみの隈取」をとった二枚目の注進。

「むきみ」というのは二枚貝のむき身に似ているところからこの名前がついております。
『助六』や『対面』の五郎などがこの隈取。


歌昇さんのお役は通称「ばか隈」と云う隈取の半道敵(三枚目)の注進 伊吹藤太(いぶきのとうた)
「ばか隈」と云うのは「むきみ」の逆さまのような形で
なんともしまらない顔に見える下がり目の隈取です。

『吉野山』の早見の藤太などがそうですね。

 

『近江源氏先陣館』の舞台は外題通り近江地方ですから、注進二人の名前にも
「伊吹」と「信楽」という地名が入っているところも洒落ております(笑)

そう云う所にも、興味を持って見て頂けますと、さらに歌舞伎が楽しくなると思います。

 


私が1998年の名題試験に5回目で合格したのは以前にも書かせて頂きました。
その時の実技の試験は各自自由演目でしたが私はこの信楽太郎を選ばせて頂きました。

 

試験官には先代芝翫さん 白鸚さん 吉右衛門さん 菊五郎さん等々大幹部の方々が並んでおられ
猿翁旦那もそのお一人でした。

ただでさえお歴々の面々の前で緊張する試験なのに その中に猿翁旦那が冷たい目線で見ておられると
一層緊張しました(笑) でも今から思えば本当にいい経験でした。


今月の第2部『盛綱陣屋』をご覧の時は隼人さんの信楽太郎、
猿三郎が名題試験の実技に選んだのはこれか、と お察しください(笑)

 

信楽太郎のみならず、私は「注進」のお役自体、本舞台では勤めた事がありません

どうしてでしょうね、そういう役どころではないと云う判断なのでしょうか??
できれば私も一度 本舞台で勤めてみたかったです(笑)