今月の『加賀見山再岩藤』は『加賀見山旧錦絵』の後日談として描かれております。

ですが、作者は全くの別人でして『旧錦絵』の作者は容楊黛(ようようたい)とありますが
この方 正直云って誰とははっきりとはわかっておりません

 

『再岩藤』の作者は有名な河竹黙阿弥です。

加賀見山の舞台となっておりますのは、もちろん石川県の金沢 所謂、加賀百万石です。

加賀家は伊達家などと同じく 大所帯故 お家騒動があとを絶たなかったと云うイメージなのでしょうか?(笑)

 

作者は違いますが今月の『再岩藤』の一応 前段となる『旧錦絵』のお話がお分かりになると
『再岩藤』のご観劇が 少し楽しくなるかもしれませんので簡単にあらすじを書かせて頂きます。

 

『旧錦絵』は忠臣蔵の女性版ともいわれ お話はお家騒動に絡んだ敵討ちです。

お家騒動には必ず張本人がおりますね。そしてそれに加担する脇の人たち。
『旧錦絵』に登場する局の「岩藤」も悪に加担する女でした。


ところが、謀がうまくいかず イライラしているところへ代参を済ませて現れた中老「尾上」、
不満の矛先を尾上に向けます。

これ、浅野内匠頭と吉良上野介の松の廊下に似通っていますね(笑)

町人の出である事をもって武芸の一つもできないであろうと、さんざんパワハラをぶつけ
自分の履いていた”草履”でさんざん尾上を殴ります。

尾上はいい迷惑・・・。

 

辱められた尾上は遺書を残して自害して果てます。

この尾上の下女が「お初」で、岩藤に主人の敵討ちをするために加賀家の奥庭に忍び込み
岩藤を討ち果たし さらに岩藤を草履で打ち、尾上の無念を晴らします。

 

と、ここまでが『旧錦絵』のお話です。

 

 

お初にお咎めはなく 岩藤はお家乗っ取りの一味だったことが露見して 
亡骸は埋葬されず、そのまま八丁畷に捨てられます。

 

ここから『再岩藤』のお話が始まります。

 

その前に、一応『旧錦絵』を振り返っておきますと、中老「尾上」を自害に追い込んだ 局「岩藤」は

下女の「お初」に討ち果たされております。

 


『再岩藤』では中老に出世して「二代目尾上」となったお初、自分が討った岩藤を弔うために
八丁畷を訪れるのですが、なんと骸骨となった岩藤がお初に対する恨みから骨が元に戻り
亡霊として復活するのです。

 

そして亡霊となった岩藤は。またまたお家乗っ取りをたくらむ望月弾正一味に加担して
影ながら協力すると云うのが『再岩藤』の物語です。

 

ですから、御殿の草履うちや大詰め奥庭の立ち回りはなどは『旧錦絵』のパロディであったりします。

また八丁畷での岩藤のバラバラな骸骨が寄って来て 岩藤の亡霊と化すところから
『骨寄せの岩藤』と云われる所以です。

 

一応の前提なのですが、「岩藤」は『旧錦絵』の時点ですでに死んでおりますので、『再岩藤』で

出て参ります「岩藤」はあくまでも亡霊です。

 

衣裳にも亡霊らしさが随所に示されておりますので、衣裳もぜひ詳しくご覧になって頂ければ

楽しめるのではないかと思います。

 


かなり簡単にご説明いたしましたが、なんとなくでもお分かり頂けましたでしょうか?(笑)

今回の『加賀見山再岩藤 岩藤怪異編』はダイジェスト版なのでおわかりにくい所もあるかと思います。

 

ですが、全く『旧錦絵』をご存じなかったら、「二代目尾上」(雀右衛門さん)とは一体誰なのか、

「岩藤」は何者なのか、御殿でなぜ額に草履があるのか、そう云ったことが分からないかも知れません

(わからなくてもお話自体はお楽しみいただけるとは思いますが・・・)

 

『再岩藤』のお話も、今回はかなりのダイジェスト版。

近いうちに登場人物の相関図なども書かせて頂きましょう。