今月の『小鍛冶』も佳境になって参りました。

中車さんもだいぶ余裕が出て来られましたでしょうか? 
舞踊の所作ももう本格的です。


ずいぶんお稽古をされたのでしょうね。
中車さんはお稽古が始まる時にはいつも すでにすべてを仕上げて来られております。

 

私たちは多少覚えてなくても初日までのお稽古の間に覚えながら・・・、
な~んて妥協の域を出ませんが 中車さんはそれを良しとされないのでしょうね。

 

台詞も動きも完璧と云っていい程のお稽古初日ですので私たちもタジタジです(笑)
やはり猿翁旦那の血筋でもありテレビや映画で培われた才能には凄いものがあります。
プラス努力家でもあられます。

 

 

その中車さんの『小鍛冶』 初役の三条小鍛冶宗近のお役も
もうご自分のものにされておられます。

おそらくこれから何回も猿之助さんとのコンビで長く上演される事でしょうね。

 

 


その三条小鍛冶宗近のお役ですが、稲荷明神の登場する後の場面、
はじめは素襖を長く着ておられ 刀を打つ時には片肌を脱ぎ、装束をある形に致します。

 

そのまま片肌脱ぎとなりますと脱いだ袖の部分が大きく邪魔になってしまいます。

そこで後見が熨斗の様な型に袖を巻き付け帯にそれを差し込む形に致します。

これを「竜神巻」と申します。

 

例によりまして、写真がないのが残念なのですが、イメージできますでしょうか?

背中に剣を指している様な・・・と云いますか、説明しにくいのですが・・・

おそらくみな様も 一度は見た事があると思います。

 

今月の番付で、絵看板の宗近。 少し形はデフォルメしておりますが、右肩のもの。

写真付きの番付をお持ちの方なら、1ページ目の左下、私たちの間狂言の隣の写真が

竜神巻が写っております。


『平家女ヶ島 俊寛』の丹左衛門や瀬尾太郎がこの竜神巻で登場致しますね。
そして瀬尾は俊寛との立ち回りの時にこれを外します。

 

 

外すのは楽なのですが、これを舞台で竜神巻にするのは大変に難しいのです。

これを今月、後見の猿四郎さんが舞台上で短い間に手際よく形にしております。

そして最後にはまたその竜神巻を外しておりますので猿四郎さん 大忙しです(笑)

 

舞台上で竜神巻にする演目は あまりないと思います。

私も今すぐには思いつきません

 

 

後ジテの稲荷明神が登場して踊りの間ですので どうしても目が 
稲荷明神の猿之助さんの方に行きがちですが そこを我慢して
中車さんと後見の方にもご注目頂ければと思います(笑)