猿翁旦那の演出で、古典歌舞伎でもなければスーパー歌舞伎でもない演目ですが、
長年 繰り返し上演されたものに『西太后』がございます。

 

全部で6回上演されておりますでしょうか?

 

西太后、この人は色んな書物や映画で稀代の悪女と云われておりますが
この作品では清王朝を守り抜いた女帝として描かれております。


主演の西太后は藤間紫先生。

(2003年11月博多座公演の筋書きより)

 

これは紫先生にとってライフワークな作品となられました。

 

ですがこの演目 不思議な経緯をたどっております。

 

初演にはテレビでお馴染みの風間杜夫さんや村井国夫さん 篠井英介さん他
女優さんでは波乃久理子さん こだま愛さん 二宮ゆき子さんと云った方々のご出演でした。

 

1997年(平成9年)新橋演舞場1月での再演の時には私、
猿三郎も村井国夫さんの恭親王殿下の子 載澂(さいちょう)と云うお役で
出演させて頂きました。

 

その後 松竹座の公演を経て2003年博多座公演での折からは
金田龍之介さん 小島慶四郎さん以外、女優さんも居られなくなり 
おもだかや猿翁一門だけでの出演で 主要人物 総入れ替えとなり
その後も数度 再演が続きました。


私はこの時には1幕2幕で西太后の宦官、安徳海と3幕は北洋新軍長官、袁世凱と云う
二役を勤めさせて頂いております。

 

安徳海の宦官と云う職務、中国の歴史を紐解くと誠に不思議な役職ですね。

 

紫禁城の奥は皇帝、皇子以外 男性禁止なので宮廷料理や雑務を行うための
ここに入る男性たちはみな、男性の大事なところを切り取って、
男性機能が働かないようにしなければ 生きていく事が出来ないのだそうです。

 

私は御免ですが、この制度 古代中国からずいぶん長い歴史があるのです。

 

もう一人の袁世凱と云う人物は先日買いました世界史図録にも
掲載されておりますが、西太后逝去の後 辛亥革命を起こし
清王朝を滅ぼして中華民国を成立させた初代大総統となっております。

西太后の懐刀であった将軍が西太后が亡くなったらすぐに反旗を翻して
清を滅ぼすのですからこの時代は怒涛の展開です。 

 

お芝居で『西太后』の幕が下りないでその後の物語があれば 
私のお役 すごい偉い方なのです(笑)・・・が、

その物語があればこのお役はおそらく 私ではなかったでしょうけど・・・(笑)


明日も少しこの『西太后』の続きを書かせてください。