昨日の問題 コメント欄にて頂いた皆様はすべて解答できた方も 
数人おられたみたいですが、大半の方は半分くらいは読めた、
と云う方が 多かったですね。 半分読めればまずまずです。


問題の演目は歌舞伎座でたびたび上演され わりと一般的に知られた題材でしたが
もとの狂言名題となるとご存じない方、字は知っているけどどう読むのかわからない。

 

そう云った方々が多かったのではないでしょうか?

正式な外題は知らなくても例えば「御所の五郎蔵」「白浪五人男」と
書いてありますと おおよそのお芝居は分かりますものね(笑)


10代から歌舞伎を見ていて、割と歌舞伎に明るいはずの家人が
(テレビでぱっとついた舞台の演目や登場人物、役者名が云えるくらい)
結構わからなかったのには 驚きました。


正式な外題をみて、通称は全部わかるけど、声に出して読んだことのないのが
多くて、普段は感覚で読んだ気になっている、のだそうです(笑)

 

「なんやっけ?この”てんぷらごろも”みたいなやつの読み方」

と云われた時は ずっこけました(笑)

 

「じゅうじゅうにんじゅう」ではありませんが、これからは
河内山を見た時に「てんぷらごろも」と云ってしまいそうです。

 

では みな様が難儀された昨日の問題の答えです。

 

1、『曽我綉俠御所染』(そがもようたてしのごしょぞめ)御所五郎蔵 


2、『青砥稿花紅彩画』(あおとぞうしはなのにしきえ)白浪五人男


3、『天衣紛上野初花』(くもにまごううえののはつはな)河内山と直侍


4、『色彩間苅豆』(いろもようちょっとかりまめ)かさね


5、『花街模様薊色縫』(さともようあざみのいろぬい)十六夜清心


6、『心謎解色糸』(こころのなぞとけていろいと)江戸時代の題名は
  『誰噂色菊月』(たれとうわさいろときくづき)お祭佐七


7、『籠釣瓶花街酔醒』(かごつるべさとのえいざめ)佐野次郎左衛門と八ツ橋


8、『時今也桔梗旗揚』(ときはいまききょうのはたあげ)馬盥


9、『神明恵和合取組』(かみのめぐみわごうのとりくみ)め組の喧嘩


10、『与話情浮名横櫛』(よはなさけうきなのよこぐし)源氏店

 
これらは漢字の読み方と云うより その狂言の内容を表している
あて書きと思った方がよいでしょうね。


たとえば9番目の『神明恵和合取組』はご存知「め組の喧嘩」ですが 
本来 歴史的に発端となった芝神明境内で開催中だった相撲の春場所。

そこの縄張りを預かるのがめ組でした。

 

ですが、力士と鳶との間で起きたトラブルから事件(大喧嘩)が起きたのです。

 

歴史的には力士も鳶も、幕府から厳しい裁断が下されたのですが、
歌舞伎では仲裁が入り 仲直りをした、と云う風に書かれてあります。

 

そこで芝の「神明」とかいて神と読ませ、喧嘩を「取組」に例え
最後には明るく「和合」して仲直りをした。 

さらにそれが力士と鳶と、友情を深めての「恵(め組)」となった。

こんな風に表しているのです。


狂言名題をそのように捉えると面白いでしょ?(笑)

他の演目も皆様で考えてみて下さい。


また、歌舞伎の狂言は全部が江戸時代に書かれた物ではありません

もちろんスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』や『ワンピース』は
記憶に新しい処ですが、

 

2010年3月に日生劇場で上演された『染模様恩愛御書』
(そめもようちゅうぎのごしゅいん)

これは 書き下ろされた作品ですが、幸四郎(当時染五郎)さんと
愛之助さんによるボーイズ・ラブを扱っていた作品。

外題に「染」五郎さんと「愛」之助さんの文字が入っておりますね(笑)


また昨年1月国立劇場で上演された作品は『姫路城音菊礎石』
(ひめじじょうおとにきくそのいしずえ)は、菊五郎劇団の演目で、
音羽屋の音と菊五郎丈の菊の文字が入っております。


今年の令和2年のお正月に上演された通し狂言は『菊一座令和仇討』
(きくいちざれいわのあだうち)

まさに菊五郎劇団が令和に発表する歌舞伎の仇討!(笑)


歌舞伎の狂言名題とは遊び心と そのお話が分かるような
洒落になって居る所が文化であり 素晴らしい処です。