歌舞伎の『小栗判官』のお芝居には馬がなくてはならない題材です。


古典歌舞伎の通し狂言『當世流小栗判官』では
荒馬の鬼鹿毛に乗って碁盤乗りをすると云う独特の見せ場がございます。


また、前回のスーパー歌舞伎『オグリ』では 
花道で2本のハシゴの上に乗せた碁盤に 宙乗りを利用して登り
後ろ足で 二本立ちすると云う 離れ業を演出しました。


さらに『當世流小栗判官』では大詰め 絵馬から抜け出た白の駿馬に
照手姫を鞍の後ろに乗せ 二人宙乗りで入ると云う演出を試みました。


この二人宙乗りは 猿翁旦那が考えた演出です。

時代劇などで主人公がお姫様を 馬にのせて二人乗りをする時、
本来はお姫様を主人公の前に乗せて 後ろから手綱を引くのが定石でした。

 

これを猿翁旦那がバイクのタンデムからヒントを経て
照手姫を初めて馬の後ろに乗せたのです。


今回は、天馬が2頭出てきて 小栗判官と遊行上人のふたりが
両花道の空中を宙乗りで入る演出となりました。


『オグリ』のお芝居では馬が大活躍ですね(笑)

 


もうひとつ、馬のエピソードを・・・

 

このお話は 以前にも何度も書いておりますので、
読んだことがある方も 多いかと思いますが、ご存知ない方も
居られると思いますので、書かせて頂きます。


1990年の年末 競馬の有馬記念にオグリキャップと云う馬が
引退直前のラストランで奇跡の優勝を果たしました。

 

ちょうど歌舞伎座で門之助さん襲名の『義経千本桜』が上演中でした。

 

さすがにこのレースは 普段競馬にあまり興味のない人でも

注目するような そんなレースでした。
競馬ブームをけん引した馬でした。

 

その次の年の1991年4月に新橋演舞場に於いて『オグリ』が
初演されました。


その時の公演中にオグリキャップの馬主さんであった方が
猿翁旦那の所へお見えになりました。

お話を聞くとこの方 小栗判官と一族の末裔の方で 
小栗さんと云うお名前。もちろん厩舎も小栗厩舎。

 

それで〈オグリキャップ〉なのか! と みんな感嘆したのでした。


思わぬご縁に『オグリ』の馬の因縁の深さを知った形となりました(笑)