昨日のブログで石橋直也くんの『舞姫』の事を
少し書かせて頂きましたが、『舞姫』が終わって
だいぶ経った時、彼がこんな事を云っておりました。


「猿三郎さん、実は舞姫の時にびっくりしたことがあるのです。
 私、脚本の夢のシーンで、猿三郎さんのお役 
 洋楽でダンスを踊るって 場面を作ってしまい 後から 
 あ、猿三郎さんダンス踊れるかなあ ミュージック分かるかなあ~?」

・・・と(笑)

「それが、洋楽のカウントを取って一番早く振りを覚えて
 なおかつ、相手の女優さんにダンスのアドバイスまで
 されていたのにびっくりしたんです!!」

・・・と(笑)





これ、私に対してだいぶ失礼ですよね?(笑)




それで、「過去に、こう云った仕事もあったんだよ!」って
教えてやりました。(笑)


平成8年(1996年)1月から2月にかけての5週間のニース滞在。
今から23年前ですか? 

『舞姫』の時からは17年前の事でした。


その仕事の半年ほど前の事、猿翁旦那からある指令が参りました。

「来年2月、私の演出のオペラ『コックドール』の再々演が
 フランスのニースであります。

 演出は初演の時に立ち会った彌十郎(さん)に任せてあるけど、
 あんたも演出助手として 一緒に行きなさい。」・・・と。

歌舞伎俳優としての私がオペラ演出のお手伝い? と
かなり驚きました。

それからオペラの台本?楽譜とにらめっこ!(笑)

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そしてこれが、その時のプログラムです。

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ヤマトタケル風のコックドールも登場します。

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お稽古の折にはソリストと呼ばれる主役級のお役の人に、まずは個人稽古、
もちろん 楽譜に合わせて動いてもらわなければならず、
必然的に私自身も どこの楽譜の動きか?
掌握していなければなりませんから、メロディー カウントは
覚えなければ お役の人に伝える事はできません

この主要人物の人たちに伝えるのも通訳を交えながらです。、
イギリス アメリカ ロシア フランスと各国の人たち。

もともと、音楽は嫌いではなかったので若い頃は 
ギターを弾いたりしては居りましたので 楽譜の記号等は
ひと通り知っておりました。(笑)


初演は参加していない『コックドール』
ビデオの映像から、半年かかりで楽譜から各自の動きを
ピックアップしてそれを自分が分かりやすい様に
ノートにつけて参りました。

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先日の部屋の整理整頓の時に、久しぶりに資料を開いてみました。(笑)

猿翁旦那のお陰で貴重な体験をさせて頂いたものです。



直也くんはこのあたりの経緯は全く知らず、
私が、音楽やダンスや踊りに疎い ただの何も知らない
歌舞伎役者だと思ったのでしょうね。(笑)

確かに 歌舞伎役者は 基礎になっておりますのが日本舞踊なので
カウントで動きを取るのには なれておりませんけどね(笑)


1・2・3・4

で踊るのは難しい人が 多いと思います。



どこで何が役に立つかわかりません


おそらく、『ワンピース』の踊りも 参加した方は大変だったと
思います。

が、きっと どこかで役に立ちますよ。



歌舞伎の動きをソリストやダンサーに伝える以外にも
マキアージュ(メイクアップのフランス語)の指導なども
兼ねておりました。

オペラの人たちが自分でメイクをすることはありません

マキアージュの人に隈取やお化粧法を教えて、
その人たちに出演者のメイクアップをしてもらいます。(笑)

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これはニースの公演の時にプログラムに掲載された私の写真です。

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一つの舞台を作り上げた各国のオペラ歌手、

こういった人たちとは、二度とお会いする事のない
一期一会の方々ですが、ひとつのものをみんなで
作り上げたと云う実績は今でも生きております。(笑)