「十二月大歌舞伎」のお稽古が今日から始まりました。

『幸助餅』のお稽古は11時から始まりましたので、
私はお昼過ぎには出番が終わっていまいました。 すいません(笑)

一応 これでも仕事ですので・・・。(笑)

12月のお芝居の事はまたいずれ 詳しく書かせて頂きます。


今日はちょっと寄り道を致しまして 過去を振り返りましてのお話。

もう何度も書かせて頂いた事ですが、初めて読まれる方も居られるかと
思いますので・・・。(笑)



スーパー歌舞伎&スーパー歌舞伎IIの演目で、再演を含め再々演、
また復活再演などの演目を数え上げたらキリがありません

その中で最新の『ワンピース』でさえ、再演の時は
新たなお役が加えられたり 台詞も手直しされて参りました。

それらの中で、同じお話なのに 台詞によっては
全く違う展開になってしまうお話も数多くありました。(笑)



最初のスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』では、試行錯誤でしたので、
台詞の中にこんな誤りも・・・。

1幕5場の熊襲館に於きまして、熊襲タケル兄弟がタケヒコの居る
吉備の国の使者から「鉄の刀と鉄の矢じり」を貢物としてもらい
それに対して云う熊襲の兄タケルの台詞に、

「この二つの武器と、我ら熊襲兄弟の力があれば 大和の国など
アッと云う間におジャンだ!」と云っておりましたが、
おジャンと云うのは、江戸時代 火事にあった家が
丸焼けになった時の表現で、半鐘をジャン・ジャンと
鳴らす所から来ている とご指摘があり、時代が合わずそれ以来
「大和の国など木っ端微塵だ!」と云う台詞に代えられました。(笑)


また、ヤマトタケルが能褒野にて息を引き取り 白鳥となって
飛び立つ時の台詞の最後も、はじめは戦った相手たちを呼び

「熊襲タケル ヤイレポ ヤイラム 今からそっちへ行くぞ!
そっちでまた会おう そっちでまた 戦おう!」と云うのが
初演時の台詞でした。

しかしこれがお客様から「死んでまで あの世でまた戦おう!と云うのは 
ヤマトタケルと云う人物は そんなに好戦的な人なのですか?」

と云うご指摘があり 台詞にはそのような意図は全くなかったのですが
ヤマトタケルが 好戦的な人物に見られるのはまずい、と云う事で再演時に、
「天翔けるこころ それがこの私だ!」と云う台詞に代えられました。 

本当に初演と再演で、ずいぶん違う台詞になって居るのが多いのですよ!(笑)


ついでにもう一つ(笑)

『八犬伝』の大詰めの中で、扇ケ谷定正が安房の国に攻め込んできた時
城主の里見義実(段四郎さん)が家来たちに号令をかける中で、

「里見家の危機である、通り道にあたる民百姓は誰もが武器を持ち
戦いに駆け付けよ!と伝えい!」と云う台詞がございました。


これが再演の時には「里見家の危機ではあるが、民百姓には関りがない、
今のうちに国を捨て どこかよそへ行くがよい、と 伝えい!」と
代わりました。

全く逆の台詞ですよね。(笑)

結局、民百姓はどちらの場合も武器を取って里見家の援軍とはなるのですが・・・。


おまけと云ってはなんですが・・・。


ある勉強会で『仮名手本忠臣蔵 五段目』の定九郎で、与市兵衛を斬り殺して 
お金を奪い取ってからの名台詞、

「五十両」と云うところを緊張しすぎて「五両!」と云った人が居たそうです。

この間違いは、お客様みなさんが知っている台詞。
お軽を売って拵えた金が五両では安すぎますし、
あとのお芝居に影響も出て参ります。

さらに定九郎の台詞はこの「五十両」しかありません

笑い事ではない笑い話(笑) 


台詞一つで、あとのお芝居が全部変わってしまう
典型的な台詞の間違いですね。(笑)



このように同じお芝居でも 台詞によって全く違う印象となります。

台詞と云うものはみな様は、何気なく聞き流しておられるかも知れませんが、
そこは毎回 試行錯誤の連続で成り立っているのですよ。(笑)


どうかお芝居の台詞、 できましたら一言一言 聞き耳を立てて
歌舞伎をご覧下さいませ。(笑)

私たちはそれだけ間違える事も出来ず、恐ろしい事になりそうですが・・・。(笑)