今月、夜の部で上演されております『雙生隅田川』

襲名披露狂言の右團次さん、2度目の猿島惣太 七郎天狗でのご出演ですが、
実は猿翁旦那も全部で、3回しか上演されておりません

それも毎回、演出が違うのです。(笑)



1976年10月新橋演舞場で上演された折、幕開きに登場して
吉田家を悩ます次郎坊天狗には、辻村ジュサブローさんの人形が
使用されておりました。

この次郎坊天狗の人形が宙乗りで現れ 吉田家へ侵入していく場面がございました。


これは当時NHKで大流行しておりました、辻村ジュサブローさんの人形劇
『新・八犬伝』の演出にあやかったものでした。

2度目からは今のように役者さんが演じるようになったのですが・・・。


そしてこの時は松若丸と梅若丸 別々の子役さんが勤めておりましたが、
梅若丸はなんと 猿弥さんの子供時代です。(笑)

笑い事ではございませんが 思わず笑みがこぼれますね。



2度目に上演されたのは1985年10月歌舞伎座公演、
この時の松若丸、梅若丸は猿之助(当時亀治郎)さんです。

そして班女の前には菊五郎さん 

当時、七郎天狗の猿翁旦那との 3人宙乗りはとても話題になりました。

県権正武国には仁左衛門さん 乳母長尾に宗十郎さん  
惣太女房唐糸に先代門之助さん 常陸大掾百連に段四郎さんと
そうそうたるメンバーでしたね。(笑)


私はこの時 大詰め本水での立ち回りの黒四天でして、
10月の冷たい水に入って居たのは覚えておりますが、
不思議と舞台中では寒くはなかったですね。(笑)

幕が閉まると途端に水の冷たさと、寒さを感じました。(笑)


昔の歌舞伎座は暖房なども効きませんし、水濡れの衣裳で
楽屋へ帰る訳にも行かず そのまま舞台下 石畳の奈落へ行き
そこで衣裳を物干し竿に干してから、裸に申し訳程度の水着のまま
体をバスタオルで拭いて 三階楽屋まで上がるのです。(笑)

この時 インフルエンザも流行り 感染しないように苦労しましたね。



この本水の場面もある『雙生隅田川』はテレビでも放送されましたので、
今でも映像は残っております。

私の猿翁旦那にかかっている黒四天も確認できますよ。(笑)




そして3度目は1994年7月歌舞伎座、

この時の大詰めは本水の立ち回りがなく、大詰めは七郎天狗(猿翁旦那)と
小天狗12人(21世紀歌舞伎組のメンバー)の勇ましい総踊りで、
私もこの小天狗の中の一人に入れて頂き 背景に大花火の上がる中 
激しい踊りをした覚えがございます。(笑)



ずいぶん上演されたように思える『雙生隅田川』

これから右團次さんと右近ちゃんの十八番となり 
猿翁旦那の公演数を超える日も そう遠くないでしょうね。(笑)