再びの『伊達の十役』のお話しで恐縮です。

今回のこの演目、十代目松本幸四郎 二代目松本白鸚
襲名披露狂言として博多座で上演されております。


通し狂言が、襲名披露狂言に選ばれた事も異例ですが、
三代目市川猿之助四十八撰と云う 澤瀉屋のお家の物が
高麗屋さんの襲名披露の狂言と云うのも これまた異例な事です。


さらに幸四郎さんの上置きの方々である、仁左衛門丈 梅玉丈
鴈治郎丈 魁春丈が顔を揃え その上 お父上であられる白鸚丈まで
ご馳走のお役で出演されておられるのは、顔見世興行以上の顔合わせです。


ご馳走のお役と申しますのは、今回の白鸚丈のお役の三浦屋の亭主琴右衛門。

今までの公演でしたら三浦屋の女将のお役で 女形さんが勤めて居られました。


そのお役を普通に、白鸚旦那に三浦屋の主人で、と 
ご出演のお伺いを立てましても、NO、とおっしゃるのが
当たり前です。(笑)

ここに、ご子息の幸四郎さんへのご祝儀、また仁左衛門丈 他の方々への
顔揃えのお礼の意味をこめられましての ご出演の意味がございます。


本来でしたら三浦屋の場面 足利頼兼(幸四郎さん)が登場する際
三浦屋の女将でしたら 店先で奥から登場致します。

それを花道から幸四郎さんの頼兼と共に 鹿之助と3人で登場して 
花道の台詞で お客様のお心をくすぐるお芝居。

これは襲名披露ならではの演出ですね。(笑)



また、2幕目滑川宝蔵寺堤土橋の場の幕切れでのだんまりの時、
通常は5人ですが、本来は登場しない三浦屋の亭主が、
だんまりに登場致します。

これも凄い! 
幸四郎さんが座頭のお役 仁木弾正で 幕を収めているのに対し 
白鸚丈の三浦屋琴右衛門が居られると どちらが座頭か? 
いい意味で 分からなくなって参ります。(笑)


これもご馳走のお役ですが、本来でしたら 筋を進めるためだけのこの場面に
民部之助の梅玉丈も居られ、このだんまりが凄く大きな場面に変わりました。


さらに御殿では幸四郎さんの政岡に仁左衛門丈の八汐、魁春丈の栄御前。


本当に京都南座の顔見世興行でも、一つの演目にこれほどの顔合わせは
なかなか ないでしょうね。

まして演出は猿翁旦那、この顔合わせのこの場には居られませんが
猿翁旦那も参加されている事に、この襲名披露狂言の大きな意味がございます。


色んな意味で大きな変化を遂げた『慙紅葉汗顔見勢 伊達の十役』
26日まで上演致しております。(笑)