七月大歌舞伎も20日となり あと一週間となりました。


昼の部、最初の演目は歌舞伎十八番の『矢の根』で、
所謂 曽我物と云われる演目。 

曽我五郎は右團次さん
 
十八番は「おはこ」と読み 市川團十郎家のお家芸である事は
みな様すでにご存じの通り。


七代目市川團十郎が市川総家得意の演目、荒事の十八種類の外題を書いて箱に入れ
それを成田山新勝寺に奉納したところから 十八番と書きまして「おはこ」
と読ませております。

その演目のひとつである『矢の根』を右團次さんが熱演されておられます。



お話は簡単、親の敵の工藤祐経を討つ機会を探っている曽我兄弟の弟五郎が
矢の根(鏃・・やじり)を磨いている最中 まどろんだところへ
兄の十郎が夢枕に立ち 工藤館での十郎の危急を夢の中で告げます。


これは一大事!と思い、たまたま通りかかった馬に飛び乗り 
兄の危急に駆けつける・・・

と こう云ったお話で、これは物語よりも、錦絵の様な様式美を
楽しむ歌舞伎となって居ります。


兄の危急に駆けつける際、舞台で《たすき》をかける事が
このお芝居の 一つの見どころとなって居ります。

このたすきを《仁王だすき》と呼んでおります。


過去のブログでも取り上げた事がございますが、
東大寺南大門などの門にある金剛力士像など、仁王さんが
背負っている様に見える あの《たすき》ですね。

舞台で使われているのがこれです。

イメージ 1


これ、かなり固く 重いものです。
たすきだけで、総重量5kgは下りません

イメージ 2



イメージ 3


よくご覧ください。これ絹糸が一本一本 縒り合わさって
太い綱のようになって居るのです。

中の一部には太い針金が入って居り それを糸で巻いております。

絹糸とは云えこれだけの嵩になると相当な重さです。

たすきだけでこの重さですから 胸鎧の衣裳 かつら 太刀などを含むと
30kg以上にはなるでしょうね。


歌舞伎の荒事は体力が居るのです(笑)



ちなみに同じ歌舞伎十八番の『暫』の衣裳の総重量は65kgだそうです。
今月同部屋の新蔵さんから伺いました。

大人一人分を抱えて お芝居をしているようなものですね(笑)


これが女形となりますと『助六』の揚巻などは、
鼈甲の笄などを付けた かつらの「立兵庫」だけで20kgほど 
さらに衣裳の打掛や帯が織物で 『暫』と同じくらいの重さがありますから 
男でないと歌舞伎ができないのが よくお分かりいただけるかと思います。


体力勝負の歌舞伎 

私の様な着流しのお役でもこの暑い時期が一番つらいです(笑)

ですが、新生歌舞伎座。
楽屋にもちゃんとクーラーが効くようになりましたので
幾分かマシと感じられる様にはなりました。