歴史的に事実かどうかは知りませんが、石川五右衛門は
大坂城に潜入して豊臣秀吉の命を奪おうと致しました。

それが失敗に終わり 見つかってしまい三条河原で
釜茹での刑によって死亡したと伝えられております。

大泥棒の代名詞である石川五右衛門。

映画や小説 歌舞伎のお芝居でもよく登場する人物ですね。

五右衛門の辞世の句が現在にまで残っているのはなぜでしょう?(笑)


小説では、映画にもなりました司馬遼太郎さんの『梟の城』が
わりと有名で 忍びの者として石川五右衛門の名が登場致します。

そして釜茹でにされる場面も・・・(笑)

映画ではかなり昔ですが市川雷蔵さんの『忍びの者』は
石川五右衛門の物語。


歌舞伎では五右衛門と秀吉のこの二人、なぜか?幼馴染の設定が多いです。
歌舞伎の発想と云うのも 面白いもの。
確かに 時代の似ている突拍子もない二人が 幼馴染だと面白いのでは
と云うのは、納得できますね。

『金門五三桐』や最近は海老蔵さん 愛之助さんもよくパロディの
石川五右衛門を演じられております。

捕まったと思いながら、つづら抜けの宙乗りで逃げ出す
歌舞伎の演出は有名ですね。

これは石川五右衛門が ある伝説の中では伊賀忍者であったと云う事から
創造された演出です。
一つの伝説が さらに派生しまして新しい物語を生んでいくのは
色々な人物にいえる事ですが この石川五右衛門につきましては
さらに面白く脚色されている部分もあるのだと思います。


悪人なのにわりと色んな演目に登場する石川五右衛門。

『戻駕色相肩』という舞踊はその五右衛門と秀吉とのエピソードで
踊られておりますが、これはあくまでもお遊び精神の舞踊。


京の洛北 紫野に来ました四つ手駕篭。
中には禿が乗っております。

本来 お互いの素性も知らない男二人(しかも五右衛門と秀吉)が 
駕篭の片棒ずつ担ぐなど ありえません(笑)

大阪新町と江戸吉原と京の島原の廓の話を 五右衛門と秀吉と禿が 
語りながら踊るというのが この舞踊のみどころなのですが、
秀吉のこの頃にはまだ存在しない 大阪新町の郭の話を
五右衛門が語って聞かせます。
それのみならず 禿(かむろ)が聞かす島原も
秀吉が語る江戸の吉原も この頃にはまだ 存在しておりません(笑)


つまり敵同士だった秀吉と五右衛門が駕籠を担ぎ 禿を挟んで
色街の話をするという洒落たお話なのです。
ですから野暮は言いっこなしの演目(笑)


この理屈抜きの踊りを勘九郎さんの五右衛門 歌昇さんの秀吉
児太郎さんの禿と 楽しんで踊られております。

写真がなくて申し訳ないのですが ご覧になられた方はお分かりだと思います。
五右衛門が舞踊の途中でかぶります白い手ぬぐいのような物は 
時代劇によく登場する姉さん被りの誇張版です(笑)でかいでしょ?

『根元草摺引』でも 小林朝比奈がかぶりますね(笑)
『毛抜』に登場する毛抜同様 歌舞伎はこれらの小道具
大きくデフォルメ致します。

ちなみにサスペンスやドラマなどでよく悪の片棒を担ぐと申しますが、
これは駕籠屋の先棒、後棒のどちらかを担ぐので、共犯と云う意味で
よく使われますね。

そしてテレビのタイトルにもあります『相棒』は駕籠屋の
この二人のコンビがお互いを呼び合うことです。


と、歌舞伎の話を書きまして どこか もやっとした気分がある方も
おられるかもしれませんね。

五右衛門、有名な某アニメにも登場しますね。

主人公からして架空の小説のフランス人の子孫?
それに 日本の大盗賊の13代目が登場するのですから
歌舞伎も真っ青な設定でしょうか?

いえいえ、歌舞伎の土壌があるからこそ こういった発想のアニメや漫画が
出ているのだと思います。


野暮なことは言いっこなし、ヒーローはヒーロー。
ヒーローの友達は またヒーロー そんな発想はまさに「歌舞伎」です。