今月、歌舞伎座の夜の部に『桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)』
と云う演目の「帯屋」の場面が出て居ります。

私がこの作品を始めて見ましたのは、1976年12月の京都顔見世。
旧南座で、帯屋長右衛門を13代目片岡仁左衛門さん 
丁稚の長吉と、信濃屋の娘お半の二役を扇雀(現藤十郎)さんが
勤めて居られました。およそ40年前ですか?(笑)

私はこの時、舞台裏で長吉から信濃屋のお半へ替る藤十郎さんの
お化粧や衣裳拵えなどのお手伝いをさせて頂いておりました。

現在はその藤十郎さんが、帯屋長右衛門でお孫さんの壱太郎さんが
長吉とお半の二役を勤めておられます。

簡単に云えば、妻もある38歳の壮年 帯屋長右衛門と
隣の14歳の信濃屋お半との恋物語。

14歳と云うと現在では・・・○○ですね(笑)
でもこれ 元は、実際にあった心中事件をモデルに作られた浄瑠璃なのです。

お半と丁稚の長吉がお伊勢参りの時、石部の宿で偶然 
長右衛門と同じ宿になり 長吉に言い寄られたお半は、
長右衛門の部屋へ逃げ込み 匿まわれているうちに二人は、
契ってしまいお半は子供を宿してしまいます。

と云うような現代でもありそうなお話で、これに『伊勢音頭』ではありませんが
長右衛門の預かっていた名刀が盗まれたり、店の金がなくなったり
お半との事も知られ 色んな事があって義母や義弟から責められ 
長右衛門は行場を失ってしまいます。

お半と長右衛門はよんどころなく・・・。と こういうお話ですが、
ここでみな様 ちょっと気になりませんか?

お半と長吉、長右衛門の名前に聞き覚えは・・・?(笑)

そう、昨年10月の巡業公演『獨道中五十三驛』の大詰めの舞踊
猿之助・巳之助13役早変わりでのお半長吉
『写書東驛路』(うつしがきあずまのうまやじ)

この踊りはこの『帯屋』のパロディなのです。

お芝居の『帯屋』では、長吉はお半に片思いで、ふられますが
舞踊の方では長吉は二枚目で、お半と思いを遂げます。

そして刀の行方と、九重の印を探してお主、丹波与八郎に届ける忠義者(笑)

私の弥次郎兵衛と喜猿さんの喜多八とが 二幕の幕開きに、
「週刊誌が飛びつきそうなネタだね!」とか「ゲスの極み!」
とかのアドリブを云っていたお話です(笑)

こう云った元の『帯屋』をご存知なら、このパロディの
『獨道中五十三驛』の舞踊の部分も楽しめると云うものです。