今月『壽・新春大歌舞伎』の「雙生隅田川」においての私のお役は、 
私にとっては、わりと珍しい役どころです。

2幕の下総埴生村の場に登場します人買いの左次太夫。
これが今月の私のお役です。

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出番は短いのですが、31年前と23年前の『雙生隅田川』が出ました時 
父冠十郎が勤めていたお役で、わが父ながら かなりインパクトのある
お役でしたのをなんとなく覚えておりました。

私は31年前は大詰めの黒四天で 本水に入って猿翁旦那の軍助と
立ち回りをしておりましたし 23年前は小天狗で猿翁旦那の
七郎天狗とともに、一緒に踊っておりました。(笑)
 
まさか後年、父のこのお役が私に回ってくるとは、
思いもよりませんでしたね(笑)

ですが、毎日化粧前の鏡に向かっておりますと 顔とメイクが段々
父の顔に似て来たのを思いますと、なぜかため息が出てしまいます(笑)

人買い。

昔、東映の「安寿と厨子王」(1961)と云う漫画映画を見ました時、
旅の途中で安寿と厨子王丸が、母や侍女と二つの船で無理やり別れさせられ 
人買いの山椒太夫の村へ売られて行く・・・。
そんな場面を見て、子供心にゾッとした覚えがございます。

もともとは、中世の説教節から日本童話となったものを森鴎外さんが
「山椒太夫」と云う小説とされ、東映で漫画映画化されたそうです。

最後は子供の私でも 涙なくては見られませんでしたが、
この時 人買いなんて仕事?が昔はこの世にあったんだ!と衝撃でした。

それ以来、子供の時に父は何かあって叱る時に「人買いに売るぞ!」
などと云って従わせた、と云う様な事もありましたね(笑)

時代的に今から思えば考えられない、とんでもない教育の仕方だったな、
とも思いますが当時はこんな叱り方、当たり前だったのかも知れません(笑)

ですが、今でも世界のどこかでは 子供を拉致して戦場に送ったり
子供を売り買いしている人たちが、実際に居る事も否めませんね。

人買いのお役を勤めている私が云うのもなんですが、こういう人たちが
早くいなくなる世界になればいいなあ~と 思います。