昨日、猿翁旦那のお誕生日に お元気なご様子のお写真を
掲載させて頂きました処、たくさんの皆様から、旦那へのお祝いのお言葉と
喜んで下さっておられるコメントを たくさん頂戴致しました。

ありがとうございました。

皆様も喜んで下さって本当によかったです。


さて本日は、先日ご観劇下さったある方から ご質問のお手紙を頂戴いたしました。

今日はそのお返事を書かせて頂きます。

ご質問は、

1、新年早々に初舞台のタケルくんですが、今年6月の初お目見得と
  初舞台と云うのは どう使い分けるのでしょうか?

2、定式幕は 下手から上手に開いて、また下手に閉じるのが普通ですが、
  8月の『東海道中膝栗毛』でしたが、逆の事があったように思います。
  どういう時に逆になるのでしょうか?(本文のまま)

と云う、内容でした。

お答えが少し長くなりそうですので、今日はご質問1に 対して書かせて頂き 
2のお答えは明日書かせて頂きます。


まず タケルくん来年1月に、二代目市川右近として
新橋演舞場『雙生隅田川』に於いて 初舞台を踏む事となります。

ですがタケルくん 今年6月に『義経千本桜(渡海屋 舟矢倉 大物浦)』で
すでに舞台は踏んでおられます。

ではこの時になぜ? 「初舞台」ではなく 「初お目見得」と云う
あり方になるのでしょうか?

ここに歌舞伎の仕来りが出て参ります。


例えですが 今の猿之助さんの場合は、
1980年(昭和55年)7月歌舞伎座『義経千本桜』の 安徳帝で初お目見得、
1983年(昭和58年)7月二代目市川亀治郎として、初舞台となって居ります。


では、今の右近さんはどうなっておりますでしょうか?

1972年6月京都南座に於きまして、十三代目片岡仁左衛門さんの
『大岡政談 天一坊』で、一般の子役として 武田右近で初舞台。

1975年1月新歌舞伎座に於きまして『二人三番叟』の付千歳として、
市川右近を名乗る!と ございます。

これはどう違うのか?


ここに家柄と云う存在がございます。

歌舞伎の家に生まれ、いずれは何らかの名前を継ぐ場合、
本名での舞台は 初舞台とならず 初お目見得となります。

但し、これも限られたお家だけで、誰でも・・・。
と云う訳には参りません 
このあたりは色々と 兼ね合いもあるのですが・・・


猿之助さんの時の様に 亀治郎を襲名した時が、「初舞台」となる訳です。


右近さんの場合、本名の武田右近で舞台を踏みましたが、
これから歌舞伎を続けて行かれるのかどうか? 
この時には定かではありません

ですから 武田右近として初舞台となります。

で、市川右近と云う名前を襲名した訳ではないので、
市川右近を名乗る と なる訳です。


では タケルくんの場合。
今年6月で 歌舞伎の役者としてこれからも 修行を続けていくことが
ある意味では内定しておりました。

そして、今回のお父様の「市川右團次」襲名に伴いまして、タケルくんは
市川タケルではなく お父様の使っておられた歌舞伎の右近と云う名前を 
二代目として継いで、舞台に立たれる訳ですから、襲名として初舞台!と
なる訳です。

ここで重要なのは 市川右近と云う名を 今の右近さんが 一代で大きくして 
次への道を拓いてきたと云う事 ですから 稀有なことだと思います。

タケル君にはさらに この名前を大きな名にして行って頂きたいと思います。 


何となく お分り頂けましたでしょうか?


ただし、困ったことに これは決まりではございません。

恐らくどこにも 明文化されている事ではないと思います。
決まりらしい決まりは ないのではないかと思います。

これが 絶対的に正しい!と云う形で 今はやりの 某まとめサイトのように
書かれてしまうと大変困るのですが 恐らく不明瞭な部分はあるものの
こういった形で 区別されているのではないかと思います。

私の解釈といたしましては こう云ったお答えになります。
という、一つの答えだと思って頂ければと思います。


ちなみに不肖 私の初舞台は、以前のブログを紐解いて頂ければ お分かりかと
思うのですが、5歳の時 宝塚新芸座公演として 舞台に立ちましたのは
宝塚大劇場での事でした。

勿論、ここまでの文章を読んで頂けましたら わかりますように
あくまでも「初お目見え」ではなく 「初」舞台 だったわけです。


その後に、13歳の時に名古屋御園座で8代目松本幸四郎(白鸚)さんの
『名和長年』等で 歌舞伎役者としての初舞台を 踏んだことになりますが・・・
この時は 山本富士子さんなど女優さんも出ておられた公演でしたので
正式に、歌舞伎初舞台と云っていいのか???


歌舞伎の初舞台?は 帝国劇場こけら落し公演の 中村吉右衛門襲名『加賀鳶』
だったのですが・・・
この時は 父嵐冠十郎の息子 と云うことで 劇場側から勝手につけられてしまった
「嵐正夫」と云う 不思議な芸名での 初舞台・・・でした。(笑)


結局 私個人にかんしましては 一体どれが初舞台???(笑)と云う感じなのです。
初舞台と申しますと おそらく記憶にも 記録にも残る大切なものなのですが・・・

私にはたくさんの 初舞台がございます。
その分、思い出もたくさんあると思ったら・・・いいのでしょうか???
わかりません・・・が それもよし!


2のご質問は 明日までお待ちくださいませ。(笑)