昨日、ご紹介した『桐一葉』は、関が原の合戦以後 大坂冬の陣が
これから始まろうと云う迄の、片桐且元を描いた作品でした。


そして坪内逍遥さんは この作品に続きまして 片桐且元が去った後、
まさに大坂夏の陣で大坂城が 滅亡するという作品を
『桐一葉』の後に 書かれております。

それが『沓手鳥孤城落月』(ほととぎすこじょうのらくげつ)です。


これはもう、大坂夏の陣の真っ最中、大坂城内が舞台です。

これからの『真田丸』と重なる物語と云うことになりますね。


勝つ見込みのない戦の中で、淀君は正気を失い、
それを思いやる 秀頼が主人公ですが、
押し寄せる大筒の砲弾 逃げ惑う侍女たち。

甲冑姿の豊臣秀頼が登場するのは この作品くらいでしょうか?


『桐一葉』の好評につづいて、そのすぐ1年後 明治38年5月に
大阪角座に於いて初演された3幕からなる戯曲です。

さすがに明治後半に書かれた新作歌舞伎だけに 超リアルな舞台面です。


私もこの作品 何回か出させて頂きました。
いわゆる兵士の役で登場する私たちも、無傷な者は居ないくらいの
負傷者だらけ。

そんなリアルな 明治期の作品らしい作品になっております。


最後は、大坂に勝ち目無し 秀頼自らも自刃する覚悟で
正気を失った 母淀君を突き刺そうとするところで、幕となります。


「ほととぎす」は、自分の巣を持たず 一説には冥途と行き来できる鳥なのだそうです。

また、恐らく皆様が一度は必ず聞いたことのある三人をあらわしたという句

 鳴かぬなら 殺してしまえ ほととぎす    織田信長
 鳴かぬなら 鳴かせてみしょう ほととぎす  豊臣秀吉
 鳴かぬなら 鳴くまで待とう ほととぎす   徳川家康

これも、実際に三人が詠んだわけではなく、三人をあらわして後世作られたものですが
ここに出てくるのが「ほととぎす」 

『沓手鳥孤城落月』意味深な外題でしょ?(笑)


『沓手鳥孤城落月』の演目は『桐一葉』よりはよく出ている作品ですが、
それでも上演回数は少ないですね。

最近では、この作品の淀君役は 先代中村芝翫さんが、
当たり役としておられました。

2011年9月 歌舞伎座閉館時の新橋演舞場に於いての秀山祭が、
この作品の最新の上演記録です。

淀君がヒロインの『桐一葉』『沓手鳥孤城落月』の2作品。

あまり出ない演目ですが、機会がございましたら一度ご覧いただけると 
『真田丸』にも当てはまるかと・・・。


明日はこれのつながりで、もうひとつ変わった歌舞伎の作品を
ご紹介致します(笑) 



変わった作品と云えば・・・

先ほどの ほととぎすの句
松下電器(現パナソニック)の創始者 松下幸之助さんの詠んだ句

 鳴かぬなら それもまた良し ホトトギス

大阪の方ならわかると思うのですが 京橋にあります ツイン21。
これは出来た時には 松下系列のモノだったと思うのですが(今はどうでしょう?)
ツインタワーになったのは、当時門真市にあった松下の本社の社長室から、
ツインタワーの真ん中に 大阪城が見えるように ツインにしたとか。


ま、このあたりは どこまで真実なのか、都市伝説に近いものなのかは
わかりませんが、同じホトトギスの句と 大阪城。

現代にまでつながります流れと云う意味では 面白い話だなと思います。