今日のブログは少し長くなりますが、どうかお付き合いくださいませ。

え? 云われなくても 猿三郎のブログはいつも長い? すいません(笑) 

昨日、VHSビデオデッキの事に焦点を当てて 書かせて頂きました。
今日の話題は少し 似通るのですが・・・。

私自身、VHSビデオデッキがまだ普及していない頃に 8mmカメラを
愛用して色んなものを撮影していた事は 昨日のブログでも
紹介させて頂きました。

ビデオカメラに移行する前の8mmカメラ。


ちょっと説明が必要でしょうか。

今現在は、ビデオを撮ります時も、SDカードやカメラ本体のハードディスクに
録画しておりますが、以前はいわゆる「テープ」に撮っておりました。

VHS-Cという、VHSテープの小さいサイズのものですとか 
8ミリビデオカセット。

それ自体を機械に入れまして 録画をして いっぱいになったら
「ビデオ」の「カセットテープ」を代える。
音楽もこの形式のものが 使われておりましたので
この形式のものはまだご存知の方も 多いのではないかと思います。


ですが、今回私が言っております 8mmカメラはこれよりもさらに前。
「テープ」ではなく「フィルム」をつかいます。
「ビデオテープ」よりも前の「フィルム」を使っての 映像を撮った時の話です。


話を戻しますが、先月、7月公演の演目で出ました『柳影澤蛍火』
ちょうど40年前の1976年8月に大阪、中座で上演されておりました。

實川延若さんの柳澤吉保 坂田藤十郎(扇雀時代)さんのおさめの方 
2代目中村鴈治郎さんの桂昌院 そして5代目中村富十郎さんの護寺院隆光。

これに私も出演させて頂いておりましたが、この演目の次の演目。
つまり、打ち出し狂言に富十郎さんの舞踊『供奴』が出て居りました。


この同じ年の3月、歌舞伎座で私 ある期間 富十郎さんのお手伝いを
させて頂いた事がございました。

そのご縁で「この『供奴』全部 8mmで記録させて頂けませんか?」と
今から考えると 若い頃とは云え 図々しいお願いをいたしました(笑)
(今考える方が 震えが来ます・・・)

ですがこの時の、天才的な富十郎さんの舞踊を何とか収録したいと云う
ある意味 プロ的根性の気持ちが勝ったみたいです。(笑)


舞踊の基本とも云える『供奴』

富十郎さん笑いながら 快く許して下さり、当時の8mmカメラで
中座の客席通路に三脚を立てて 撮影させて頂いた事がございました。
もちろん劇場側の許可も頂きました。


昨日も書きましたが、この8mmフィルム 連続して撮影できる1本の長さは、
3分20秒。

20分近くある舞踊『供奴』を撮影するには とても1日の収録ではできません

曲と曲の時間を計り 花道の部分や本舞台の踊り、6本のフィルムを交互に使い 
3日ほどに分けて 全編を撮らせて頂きました。


もちろん音声は入って居らず、モニターからの音声はカセットテープに
別録音で収録いたしました。 

現像に出してから、返って来るまで うまく写っているかどうか? 
試写してみるまでは、本当に気が気ではありません(笑)

で、現像して出来上がったフィルムを編集して いい処でカットして
コマをつなぎ合わせる作業も私がやりました。

子供のころ もともと、将来は映画監督になりたいと思って居たので、
こういう作業は好きだったのでしょうね(笑)


つなぎ終ったフィルムをもう一度、カメラ屋さんに出して 
そのフィルムに 今度はサウンドトラックと云う 所謂 フィルムに
磁気テープを張ってもらう作業を してもらう訳です。
ビデオと違い この当時 8mmでは同時録音ができません

出来あがったフィルムに さらに今度はカセットテープの音声を
映像に合わせて 録音して行く作業が必要です。
(業界用語でアテレコ・・絵に当ててレコーディング・・と云われております。)

1日だけの舞台収録と音声収録ではないので、足踏みの多い『供奴』は
そのまま録音しますと かなり絵と音がずれて参ります。

ですから、絵と音が合う処で何回も合わせながら音声収録。 
かなり苦労致しましたが なんとか完成! 


ちょっとおこがましいのですが 簡単な映画を作成するに近い作業を
したようなものです。

専門作業の必要な 現像以外の全ての行程をしたというわけですね。


これが40年前!


ある日 うちの整理をしておりましたら ごっそりと昔の8mmフィルムの
箱が出て参りました。

その中にこの『供奴』と 富十郎さんの注進『信楽太郎』

昔の扇雀時代の藤十郎さんと朝丘雪路さんとの梅田コマ劇場での
コマ歌舞伎での舞踊ショー『雪月花の中の八木節』のコンビでの踊り。
その他 たくさんのフィルムが出て参りました。

これらのフィルムは出てきたのですが これを映すことが出来ません。

カセット状ではございませんので、それに対応した形式の映写機が必要なのです。

この時はもう うちに映写機がなく見る事が出来ませんでした。


つい最近 テレビのCMで「ヤフオクでの映写機購入」と云うものが流れて居り
あ、これ もし同じものが買えたら これらの映像 見られるかも?と早速検索。
 
うまい具合に 格安値段で映写機を購入しました。 

映写機ですよ、映写機。カラカラカラ~というあの形式のモノです。


ただこの時、サウンドトラックに音声を録音した事を 一切忘れておりまして、
確か音声なしの映像だけだったよな・・?と 期待せずに映写しました処
アテレコの音声が復元され ビックリ。 私自身 感動いたしました。

我ながら よく手間ひまをかけて 録音していたものだ!と


これを先月 歌舞伎座に映写機を持参しまして 公演の合間 楽屋で
映写会をしました。

段之さん 笑野さん 猿紫さん 猿四郎さん他 一門の人たちが
『供奴』などの映像を見て みんな感動してくれて うれしくなりました。

中には8mm映画を初めて見た人も・・・(笑)

・・・ですよね・・・


ただ、映写機で映すとなると 場所も要り スクリーンやなんやかや
大がかりとなって いつもいつもと、そう簡単には参りません
(楽屋では壁に映しました。新しくなった歌舞伎座の楽屋でなければ無理でした)


段之さん曰く「これDVDにならないの?」と・・・。

私、そこまでの発想はなかったのですが「きっと 他のみんなも見たいわよ!」と

・・・簡単に云ってくれる!!


40年前 このフィルムが出来あがった時でさえ 完成までにかけたのは
当時のお金で全部で○○万円。

それをさらに、今回DVD化するには・・・。
見積もりを聞いた時、やはり○万円と聞きました。(涙) 

でも、この際だから・・・と 清水の舞台から飛び降りた!と思い
VHS化を飛び越えて、DVDにダビングをお願い致しました。


そして先月、頼んでおいた8mmからのダビングのDVDが昨日 出来上がりました。

ちょうど、前のお稽古が押せ押せになって居た時、段之さんが
「今 時間があいたから 猿之助さんが見たい!って・・・。」と云う事で 
猿之助さんの楽屋へ持参しました。

ちょうどそこに門之助さんも居られ 段之さんを含めて4人で鑑賞いたしました。


即座に猿之助さん「この映像も、富十郎さんもすごい!」 と


富十郎さん40代の頃の『供奴』貴重なものです。 今後 このフィルム 
どうしようか? どこかに寄贈しようか?と 考えております。 

それにしましても、この記録、お金の問題ではありませんが、
総額 いくらかかったでしょうか・・・? とほほほ!(涙)

今日の写真は その貴重なフィルムと 出来上がったDVDです。

イメージ 1


上が8mmフィルム 下がダビングしたDVDです。

フィルム、初めてご覧になられる方も 多いのではないかと思います。
昔はこんなものだったのです。

フィルムがビデオにとってかわられたのは どのくらい前でしょう、
35年?40年?

そのビデオもDVDなどにかわります。

この後の進化は目覚ましいものがありますが 古い記録古い映像を
そのままみられるというのも  凄いものだなあと思います。