昨日の『真田丸』関連のお話ですが、歌舞伎で真田信繁(幸村)が
登場する作品は 正直ございません


以前にも書きましたが、徳川の時代に確立された歌舞伎ですから 
徳川政権を敵対視したり 批判したりする演目が 上演できなかったのは
無理もないことなのですか・・・

規制されたからと云って やめてしまうのは 江戸っ子?ではございません(笑)
出来ないなら どうやってその部分をクリアするか。

庶民の知恵ともいうべき発想で、これは真田家の物語だ!これは家康だ!と 
言ってないのですが、名前も時代背景も違うのですが、見る人には全てわかる、
誰にもわかる そんな作品はございます。


それが10月に歌舞伎座で上演される 8代目中村芝翫襲名披露狂言の
ひとつにもなって居ります『近江源氏先陣館』の「盛綱陣屋」


これは、真田信繁(幸村)の兄 真田信幸が主人公ですが、
徳川に遠慮して 佐々木盛綱(平安~鎌倉時代の人の名)として 登場致しております。

そしてここに登場する北条時政はまさに、徳川家康!(笑)


また『鎌倉三代記』に登場する盛綱弟 佐々木高綱は明らかに真田信繁(幸村)。
時姫は千姫 三浦之助は木村重成です。 
幕切れ佐々木高綱がぶっ替えった装束の旗印は まさに真田六文銭。(笑)


この二つの作品は、同じく近松半二ほかの脚本です。

初演的には、『近江源氏』の方が数年早いのですが、続編的に『鎌倉三代記』が
作られたそうですので、当時のご観客衆には、佐々木=真田の形は
出来上がっていたことでしょうね。


こういう風に時代背景を考えますと、これらの歌舞伎もまた
違った角度からの色合いを見せ 面白いかも知れません


皆様も 今後こういった作品を見られます時には その人物が 実は誰を示しているか
そういったことを ご理解いただいたうえで 見ていただきましたら
さらに楽しいものになるのではないかと思います



そこで今日は、その助けに なるかならないか・・・

明治など後から書かれた物も含めて 代表的な作品らも並べまして、
歌舞伎に於ける 徳川の時代を少し尋ねてみましょう(笑)


列挙いたしますので、それを詳しく お調べになるかどうかは・・・皆様次第(笑)


まず、秀吉亡き後 徳川の天下となるための作品としては『二条城の清正』が
あげられますね。

これは家康が孫の千姫の婿、豊臣秀頼と、京都二条城で対面するお話。
大坂方の勢いが、まだ残って居る時代ですね(笑)



この後を描いた作品には坪内逍遥作『桐一葉』がございます。
崩壊していく大坂方の内部 淀君と片桐且元 木村重成などの苦汁と
大坂の顛末を描いた作品。

最後の長柄堤の場面では、幸村こそ登場致しませんが 片桐且元と木村重成の
台詞の中に徳川を見据え 
「大坂方の大将には 今 九度山に隠れ住む 
先の上田城城主 真田昌幸が次男 左衛門佐幸村こそ、頼みとなる御仁」
と 云う台詞がございます。



決定的となりますのが『沓手鳥孤城落月(ほととぎすこじょうのらくげつ)』
これはそのものズバリ 大坂城落城の物語。
淀君と秀頼が幕切れに自害と云う結末。



ここに先の『盛綱陣屋』が、間に入って参ります。
佐々木高綱の名の信繁(幸村)が、討たれたと云う偽情報が
信幸に伝えられるお話。(笑)大坂の陣が舞台です。



少し進みまして 家康が隠居の時代になってからは、
2代将軍秀忠の子が3代将軍を争うお話で、北条秀司さんの『春日局』があります。
これで家光と忠長の決着がつけられます。


家光死去の後、家綱が4代将軍となった時期に 由比正雪の《慶安の変》が
起きました。この政治不安定な時代を描いた作品に『丸橋忠弥』があります。


そして4代将軍、家綱が亡くなると 現在、歌舞伎座上演中の『柳影澤蛍火』と
つづきますでしょうか?(笑)

今月の歌舞伎座、昼の部『柳影澤蛍火』では、徳川の5代将軍 綱吉が
登場致しますね。



とりあえず、前編として今日はここまで・・・(笑)

こうやって並べて行くと 歌舞伎の作品も別の角度で
面白いではありませんか?(笑)


ですが、ここにあげました作品のほとんどは 明治以降の作品です。
なかなか難しい時代だったのでしょうか。


歌舞伎の演目と 実際の歴史。
勿論、史実なのか物語なのか そういった部分での見極めは必要ですが、
見比べの楽しさもございます。


明日は、綱吉の治世の続きから 書かせて頂きます。